うちだ・たつる 1950年東京都生まれ。神戸女学院大名誉教授。仏現代思想専攻。映画論から武道論まで幅広く発言している。 就職氷河期に直面した世代(30代)は社会の不条理を思い知らされたはず。頭が良く、性格も問題ない、教師からも評価された学生がなぜか就職できない。一方、思いがけない人が早々と内定を手に入れる。若者たちが一番苦しむのは、この採否の基準が明らかでないところ。努力の仕方が分からないのだ。 だから、仮に正社員に採用されて働き始めても不安は続く。同じ職場の非正規労働者と比べても、能力にそれほどの差はないと実感している。「君の替えなんかいくらでもいるぞ」という上司に反論できず、どれほど労働条件が悪くなっても堂々と是正を求められない。そういう条件で働く若者に向かって「覇気がない」と言うのは気の毒だ。 採否の基準を明らかにしない、格付けの根拠を示さないのは、労使間に権力の非対称性を作り出すた