渋谷のバーにて― 「よう、久しぶり!元気にしてたか?」 「まあ、それなりにな」 「卒業式以来だから……丸3年?」 「もうそんなにか。早いもんだな」 「で、どうよ?コード書いてる?」 「それがさ、」 男はうつむき加減で自嘲的に笑った。 「実は会社を辞めようかと思ってるんだ」 「そうか……。なんでまた?」 「うちのプロダクションマネージャーがとことん無能でさ。もうずっとデスマ続きなんだよ」 「そんなの、この業界どこでも一緒だよ。Ajaxで金融システムのセキュリティメンテナンスだろ。 社会の根幹インフラじゃねーか」 「そうは言ってもさ。来る日も来る日もデバッグ、デバッグ。仕様書は毎日書き換わるし、 くだらないことでクライアントはいちいち文句付けてくるし。なんだか、 自分がどんどん腐っていく気がしてさ」 「腐っても一部上場だろ?いくらUnix環境を構築してSlerか