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ブックマーク / www.city.kobe.lg.jp (8)

  • 神戸市:ごろごろ、神戸3「第13回 原田通のイーサン・ハント」

    前々から受講したかった灘大学に今季ようやく申し込む事が出来た。さっそく初回の講義では、当地で創業90年になる萩原珈琲さんの歴史を学ぶ。今まで知らなかったのだが、会場である原田資料館の近くには大正13年からの歴史ある和田市場がかつて存在して、萩原珈琲はそこから始まったのだという。会社沿革を見ると当時の所在地は武庫郡西灘村字原田620。質疑応答の時間になるとかつて和田市場に暮らしていたという年輩の方が挙手をされて、先代先々代がいた頃の市場の様子をありありと語っておられた。 なくなった市場について話す。もしかすると、神戸に暮らしている限り、いつか自分もそのような立場になるのかもしれない。そんな事を考えながらの帰り道、駅近くの交差点のあたりで突然、女性の悲鳴が聞こえたのだった。 これは何事かと思い周りを見渡すと、視界に入ったのは犬のリードを持って呆然とする女性と、少し離れた場所にはリードが外れた状

    神戸市:ごろごろ、神戸3「第13回 原田通のイーサン・ハント」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第34回 ミッドナイト・スペシャル」

    最初に黒人音楽に触れたのは二十歳になる直前、ジャズでもファンクでもソウルでもなく、第二次大戦前に吹き込まれたノイズまじりのブルースの録音だった。当時大阪梅田の丸ビルにタワー・レコードがオープンして、町の小さなCD屋しか知らなかった私はデパートのような広い売り場が珍しく、何度も自転車で一時間かけて通っては様々なジャンルの視聴コーナーをはしごして回った。そしていつしか、まだ電気楽器が採用されていない時代の、古いブルースにどっぷりとハマっていった。1995年の秋の事だ。 ブラインド・ブレイク、トミー・ジョンソン、スキップ・ジェイムス、スリーピー・ジョン・エスティス、ブラインド・ウイリー・マクテル、ビッグ・ビル・ブルーンジー。主にアコースティックギター1で演奏されるそれらの音楽はギターを買って間もない私をときめかせるには充分で、彼らのスタイルを模倣しようと毎日必死に練習をした。こつこつと集めた古

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第34回 ミッドナイト・スペシャル」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第23回 「母親」を半分引き受ける」

    初めての立ち飲み屋デビューは確か生後3か月くらいの頃。以来私は抱っこしながらであれベビーカーに乗せながらであれ、ホルモン屋や串かつ屋、寿司屋に焼き肉屋、さまざまな「酒の飲める場所」に子供を連れて行っている。飲みに出かける回数自体は激減してしまったが、子供がいるからといって行動範囲が制限されてしまうのもシャクだなと思い、なるべくどこにでも子連れで行くようにしているのだ。もちろん混雑している時に行くのは他の酔客や私の子供、どちらのためにもならないので避けるが、さいわい近所には朝から開いている酒場がたくさんあるから、すいている時間帯を狙って店の前にベビーカーを横付けし一杯ひっかける。関西特有の気安さか、神戸では赤ちゃん連れで入れる店を探すのに困る事もなく、こんな所に連れてきて…などと言われた事は今まで一度もない。 というような話を先日、その日は灘区の水道筋にある串かつ屋「一燈園」に子供を連れて行

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第23回 「母親」を半分引き受ける」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第29回 すべり台」

    手足ばたつかせるだけだった赤ちゃんがいつの間にか寝返りを打ち、ハイハイし、やがて立ち上がって不器用に歩き出す。歩くことを覚えてからというもの、ずっと一日中あっちへこっちへと動いているものだから、ついて歩くこちらが先にバテてしまい「子供の体力はすごいな。四十男にはついていけねえわ」そんな事ばかり考えていた。でも、こちらも体力がついたのか単に慣れただけなのか、一日のやりくりに関してまあこれくらいならなんとかなりそうだ、なんて甘く考えていた矢先、先月くらいから子供の身体能力が急に一段階、上のレベルに移行したというか、今までのは準備体操だよとばかりにさらに激しく外を駆け回るようになった。偏のかたまりでバナナとフライドポテトしかってないのにお前元気だなあ、というのは置いといて、ついて歩く私にしてみれば「このあたりが頂上だろうか」などと甘く考えていた場所はまだまだ山の一合目二合目であったというわけ

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第29回 すべり台」
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第17回 坂バスの走る町」

    灘区を走る「坂バス」が気に入って、用もないのにこのバスに乗っている。 山があって、海があって、その間に坂道があって人々の暮らしがある。そんなぼんやりとしたイメージを「神戸らしさ」と呼んでもいいのなら、坂バスの窓から見える商店街の人々の行き交いや、途中下車して歩き眺める町の景色は、そんな「神戸らしさ」のイメージにくっきりと輪郭をあたえてくれるように思える。神戸といっても広いので、ここは「灘らしさ」と言ったほうが良いだろうか。JR灘駅の南口を降りてすぐ、青空を飛ぶ白いカモメが目印のバス停に立ち、20分に1度やってくるバスに乗る。210円を料金箱に入れて、座席に腰を沈める。発車まであと10分お待ちください。それもまたのんびりしていて良い。私はタブレットをかばんから出して、地図を見る。 神戸に旅行に来て1日ぽっかりと予定があいたなら、あるいは関西に住んでいて「今日はやる事がなくてひまだな…」という

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第17回 坂バスの走る町」
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    kidspong 2017/09/06
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第8回 市場のある風景」

    古い町なみを壊してしまうのは簡単だ。 神戸に住み始めてこの2年数ヶ月の間に、私の狭い行動範囲だけでも稲荷市場のアーケードが残っていた部分と、宇治川の毎日市場がなくなった。どちらの市場(いちば)にも共通するのは、私が暮らし始めた時点では往年のにぎわいはすでになく、ほとんどの店舗がシャッターをおろしていたという点で、そこには海底深くに眠ったままの沈没船を思わせるような、時間の止まった静けさがあった。現在もよく行く神戸新鮮市場周辺をはじめ、灘や板宿や長田、三宮駅近くの二宮市場や大安亭(おおやすてい)市場に行けば神戸には今もまだまだ現役で活気ある商店街や市場の風景が見られるのだが、数十年後の未来にもこれらの文化が残されているのかと言えば、そんな保証はどこにもない。 私は東京の池袋に長く住んでいて、暮らしていた町が丸ごと再開発によって跡形もなく消失するという経験をした。何十年にわたる人々の営みがあろ

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第8回 市場のある風景」
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    kidspong 2017/06/29
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第2回 新しいメリケンパーク、魂のレポート」

    昨年の夏にポケモンGOが大流行していた時、私も子供を抱きながらスマートフォン片手に水辺に暮らすレアポケモンを探して海岸沿いを歩き回っていたのだが、ある日何の前触れもなく貴重なポケストップ(ゲームのアイテムを入手する場所。現実世界にあるモニュメント等に設定されている)の宝庫であるメリケンパークが工事用フェンスで閉鎖され、ポケモンGO愛好家としては非常に迷惑し憤慨していた。それから半年以上が過ぎて、あれほど熱くなったゲームにはすっかり飽きてしまっていた4月の初旬、メリケンパークの再整備工事が終わってすべてのフェンスが取り払われ、下旬にはでかいスターバックスまでオープンして全面リニューアル。私もポケモンGOの恨みはどこへやら、さっそくベビーカーを押し歩いて遊びに行って来た。しかしここには何もない。芝生と海があるだけだ。 でもまあ「工事前のメリケンパークって何かあったっけ?」と思い返してみたが、以

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第2回 新しいメリケンパーク、魂のレポート」
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    kidspong 2017/05/17
    おもしろかった。関係ないけどお子さんの靴もファミリアという隙のない神戸感w
  • 神戸市:ごろごろ、神戸2「第3回 なだらかな起伏を駆け上がる」

    男はつらいよシリーズの最終作である「寅次郎紅の花」を見ていると、いささか唐突とも思える流れで1995年震災の年の長田区菅原市場周辺の風景が出て来る。実際は映画冒頭で、神戸でボランティア活動をしている寅さんの姿が描かれ、ラストに再びその時お世話になった人達の所に立ち寄るという話の流れがあるので、唐突というわけでもないのだが、物語の主な舞台となる奄美群島加計呂麻島(かけろまじま)ののどかな風景や登場人物達の恋愛模様の中で、やはり最後に差し挟まれる長田区のパートだけがいきなり、フィクションからノンフィクションの世界に引き戻されるような、圧倒的な現実感で寝ぼけた頭を殴られるような「唐突さ」を感じてしまうのだ。 19歳になったばかりの私は震災が起こったその日の早朝、ニュースの速報を見て何も考えずに実家のあった東大阪市からママチャリをこいで神戸に向かった。何時間かかったか覚えていないが、武庫川を越えた

    神戸市:ごろごろ、神戸2「第3回 なだらかな起伏を駆け上がる」
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    kidspong 2017/05/17
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