色美しい水彩の画集。描かれているのは、「ヴィヴィアン・ガールズ」と命名された7人姉妹が活躍する、架空の物語だ。子供奴隷制を敷く邪悪な大人の男たちの国と、その廃止を求めるキリスト教の国との戦い。南北戦争がモデルになっているそうだが、ここで主題になっている戦争や暴力、差別や搾取、そして信仰への疑念などは、今なお世界各地で見られる問題である。 世の中の理不尽さに対する怒り。絶望。ナイーヴすぎるほどの感情の中で、おそらくは精神のバランスを守るために、敬虔(けいけん)なカトリック教徒であったダーガーは創作した。男性器がついた少女も描かれたが、誰かに見せることを前提にしていたわけではないこともあり、その理由は謎である。 物語の多くは冒険小説から、少女たちの姿のほとんどは広告から借用してのアレンジだったことが最近ではわかっている。そんな作品を「アート」と呼ぶことに抵抗を持つ人がいるかもしれない。けれど、