ノーベル賞作家の大江健三郎さん(79)が一人で選考を行う文学賞「大江健三郎賞」が7日、岩城けいさん(43)の『さようなら、オレンジ』(筑摩書房)に贈られる第8回で終わることが明かされた。80歳になる前に節目をつける潔い決断となった。 この賞は、大江さんが年に1回、「文学の言葉」を用いた作品の中から選び、受賞作は英仏独語などいずれかの言語に翻訳出版されるのが特徴だった。創設にあたって2006年10月、大江さんが独フランクフルトでの講演で、日本文化が「閉鎖的」になろうとしていると語ったことに、風穴を開ける強い意志を感じたのを思い出す。 賞は結果として、主に中堅になる手前の作家たちの背中を押し続ける形となった。第1回は、芥川賞受賞から5年を迎えた当時34歳の長嶋有さんに贈られた。文学性と大人になりきれなさを併せ持つこの世代の作家を象徴するような作風を選評で「『ヘタウマ』の手練れ」と見事に称した。