イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」は、イラクやシリアで周縁領域を実効支配する土着の政治勢力としての実態とともに、その掲げる理念や組織論により、世界規模でのジハード(聖戦)への共鳴者を引きつけている。 ジハードの究極の目的は、イスラム法が支配する領域を拡大し、そこにカリフ(預言者ムハンマドの後継者)が指導する政体を設立することにある。このことはイスラム法上の定着した通説であり、理念として反論する信者はほとんどいないが、実際に自らをカリフと主張する最高指導者バグダーディとその支持者の支配を受け入れた国はなく、進んで従おうとする人も世界のイスラム教徒の中の多数派ではない。ただし少数の信奉者を引きつけている。 背景にあるのは、2000年代に生じたアルカーイダなどグローバルなジハード主義運動の組織・戦略論の変貌である。01年の米中枢同時テロをきっかけに始まった米国の世界規模の「対テロ戦争」で追