佐橋亮東大准教授の新著「米中対立」(中公新書)は、1990年代に形作られた米国の対中関与政策が2010年代に衰退していく過程を米国の視点から描き、その変化が日本や世界にどのような変化を及ぼすかを展望した良書である。以下、二、三感想を述べたい。 まず冒頭で、米国の対中関与政策が変化した原因は、①米国が中国に抱いた「三つの期待(経済改革、政治改革、国際秩序への貢献)」が裏切られて、信頼関係が壊れたこと、②中国のパワーが米国に接近してきたことで、権力交代への恐れが生まれたことの2点だとする。明快、骨太な分析枠組みだ。 旧ソ連崩壊・冷戦終了後の対中政策をどうするか? から始まった関与政策は、その後幾多の試練を経験するが、打たれ強く維持される。しかし、オバマ政権末期の2015年頃から、上記の原因により中国に対する違和感、警戒感が高まっていき、トランプ政権の時期に全否定されるに至る。四半世紀にわたるこ