SNSなどで「境界知能」という用語がたびたび使われている。これはどういう言葉なのだろうか。昭和大学発達障害医療研究所の太田晴久所長は「精神医療のなかでは境界知能は困っている当事者を支援するための言葉で、SNSでの使われ方には違和感がある」という。ジャーナリストの末並俊司さんがリポートする――。
![「境界知能」は「低学歴」のようなレッテルになっている…専門医が「安易に境界知能と呼ばないで」と抗議する理由 当事者の生きやすさを支援するための言葉だったが…](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/dc83c1badee3be1c91dffe162466d2d45d855158/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fpresident.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Fc%2F3%2F1200wm%2Fimg_c3e09c0b3801c5858a58c577ac6ceb90944500.jpg)
幸せな生活をずっと続けるにはどうすればよいのか。米国カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授であるソニア・リュボミアスキーさんは「幸福になるための最大の鍵は『私たちの日々の意図的な行動』にある。『非常に幸福な人々』と『不幸な人々』を比較し、実験を行なったところ、『最も幸福な人々の考え方や行動パターン』がわかった」という――。 ※本稿は、ソニア・リュボミアスキー『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。 「ポジティブ心理学」の研究者と話し合ってわかったこと 2001年1月、私はメキシコにある「アクマル」という、カンクンから車で2時間ほどの静かで美しいリゾート地へ旅しました。そこは暖かなそよ風が吹く場所で、「パラパ」と呼ばれるヤシ葺き屋根の小屋に6人ほどが集まりました。「ポジティブ心理学」という、当時はまだかたちになり始めたばかりの分野の研究者
日本国内に146万人以上のいるといわれる、ひきこもりの人たち。コロナ禍で世界中にもhikikomoriが急増し大きな問題になっているが、九州大学の研究チームは「血液検査で、ひきこもりの人は健常者と異なる特徴的なパターンを示すことがわかり、それがひきこもりの重症度とも関係する」ことを発見した――。 ひきこもりが血液検査でわかる⁉ 本稿では「もっと知りたい人体のこぼれ話」をご紹介します。まずは血液のお話。ひきこもりは、オックスフォード辞書でも「hikikomori」と表記されており、和製英語として普通に使われる言葉になっています。定義としては、「仕事や学校に行かず家族以外の人との交流をしないまま6カ月以上自宅にとどまり続ける状態である」とされており、日本では146万人以上のひきこもりがいると推定されています。 そういうと、ひきこもりは日本特有のものかと誤解されますが、COVID-19が世界で猛
今年春以降、マイナンバーカードに関わるトラブルが次々と明るみにでた。 「コンビニで他人の住民票が発行された」「マイナンバーカードと一体化された健康保険証に、他人の情報が登録されていた」「マイナンバーカード取得者向けサイト『マイナポータル』で他人の年金記録を閲覧できた」「公金受け取り口座に別人が登録された」など。 いずれも政府が「マイナンバーカードを使えばこんなに便利になる」と、大々的にアピールしてきた分野だけに、衝撃は大きい。 政府が急ごうとするほど国民は不安になる マイナンバー制度が2015年に導入された当時は、「マイナンバーは個人情報であり、絶対に他人に知られてはいけない」などと言われ、保管用金庫の売れ行きが伸びるといった騒ぎもあった。なのに、他人の目に情報をさらすようなことが続出しているとは。なんともショッキングだ。 コンビニでの誤発行は、富士通の子会社が開発したシステムに問題があっ
職場と自宅の往復で、いつのまにやら中年に 朝起きて、身支度を済ませて、出勤して、仕事をして退勤。仕事帰りにスーパーに立ち寄り、総菜コーナーで適当なおつまみとお酒を購入して帰宅。NetflixやYouTubeを観ながら晩酌して就寝。 こんな生活を繰り返しているうちに、あっという間に何年も過ぎて、気づけば中年にさしかかっていた――という人は、プレジデントオンラインの読者の方にもそれなりにいるのではないだろうか。 ああ、自分はどうしてこんな無駄に時間を使ってしまったのかと後悔で胸が苦しくなる。だらだらとした時間を過ごさずに、自己研鑽に充てていれば、婚活に充てていれば、キャリアチェンジに充てていれば、もっと違う人生が待っていたかもしれないのにと、自責の念に駆られて憂鬱になることもある。けれども、また仕事が始まると、同じような生活を繰り返す方向に、自然と体が流れて行ってしまうのだ。 私、来月で33歳
愛知県小牧市内、当時30代後半の日本人女性を無免許運転の上でひき逃げして逃走し重傷を負わせたボドイ(技能実習先から逃亡したベトナム人)の自宅を訪ね、同居人たちからの聞き込み後に記念撮影をした筆者。 「在日中国人」は成熟しすぎた ――安田さんといえば、大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞した『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)や『性と欲望の中国』(文藝春秋)など、中国ライターの印象が強いですが、最近は在日ベトナム人をよく取材されていますね。 【安田峰俊】もともと2014年あたりから在日ベトナム人には目配りしていましたが、大きな要因はやはりコロナです。2017年に習近平第二期政権が成立してから、中国本土で政治的な社会問題に触れる取材をすることがいっそう難しくなりました。ただ、中国本土に行かずとも、香港なり台湾なり、もしくはアフリカなど海外の華人社会をウロウロしていれば全
海外の学校ではどのような性教育が行われているのでしょうか。漫画家の田房永子さんは「ある女性がカナダの中学校の性教育で、『初めてのセックスはどんなシチュエーションかを考えてくる』という宿題を出されたという話に衝撃を受けた」といいます――。 「男性の性欲は女性のそれとは比べものにならない」のか 日本の小中高では、第二次性徴として女性には「生理」があり男性には「射精」がある、と性教育でならうのが一般的だと思います。 生理は生殖にまつわることで、射精は生殖にまつわりながら性欲と切り離せない機能。それを男女の“対”として教わることで、暗に「女性には性欲がない、もしくは男性に比べてわざわざ教えるほどでもないくらい弱い」かのような印象が刷り込まれているように思います。 それにより男女がお互いの無理解は深まり、溝を複雑化させているんじゃないか。私はそう思ってきました。 男性のように射精とセットになっていな
日程調整、他人の幸せ話…グループでキャンプに行くとどうなるのか ——これからヒロシさんにソロキャンプの始め方・楽しみ方を教えていただきたいと思います。そもそも、なぜひとりでキャンプに行くんですか? 単純に寂しい気もするのですが……。 たしかに、そう思う人も多いですよね。なので反対に、グループでキャンプに行くとどうなるかを想像してほしいと思います。 たとえば、あなたが、キャンプに行きたいな、と思ったとします。それで、「よし、今度の土曜日、久しぶりにあいつでも誘おうかな」と友人に連絡を取ってみる。この状況、どう思いますか? ——久しぶりの旧友とのキャンプなんて、楽しそうな状況だと思います。 僕にはその後の最悪の展開ばかりが見えてきますよ。まず日程を合わせるだけでもなかなか大変で、友人から断られるかもしれません。 それだけならまだしも、「その日は彼女と出かける予定で」とか余計なことまでいわれて、
退職した瞬間に、ぱったり交流が途絶える「友達」 よく高齢者向けに「ソロ社会」をテーマとした講演会を実施した際、特に男性の高齢者からこんな質問を多くいただきます。 「会社を辞めてから友達がいなくなった。どうすればいいか?」 この質問は、まず、前提の認識が違っていると思います。「友達がいなくなった」というのは、元は「友達がいた」という前提です。しかし、こうした質問をされる方は大抵「そもそも友達なんて元からいなかったのに、それに気づいていない」場合が多いのです。 彼らのいう友達とは、あくまで会社の同僚や上司・部下という「自分の周りにいた人」の事を指していて、決して友達ではありません。もちろん、会社の中で友達をもつ人もいるでしょう。頻繁に飲みに行ったり、休日にゴルフに行ったり、場合によっては、家族ぐるみで海水浴や旅行に行く間柄かもしれません。しかし、そのほとんどが会社を退職した瞬間に、ぱったり交流
「ことばと心の謎」に迫る研究のきっかけ ある日、町の乳幼児健診から帰ってきた心理士の妻が、ビールを飲みながら「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」と言ってきました。 障害児心理を研究する私は、「それは自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の独特の話し方のせいだよ」と初めは静かに説明してやりました。しかし妻は、話し方とかではなく方言を話さないのだと譲りません。 やり取りするうちに喧嘩になり2、3日は口を利いてくれませんでした。こちらも長年、その道の研究職であるつもりでしたから、たとえ妻でもこんな意見は聞き捨てならず引くに引けません。 「じゃあ、ちゃんと調べてやる」 これが思いがけずその後十数年にもわたる「ことばと心の謎」に迫る研究のきっかけだったのです。 私は軽い気持ちで、知り合いの特別支援学校の先生方にこの話をしてみました。するとなんと妻の発言を支持する意見ばかりが寄
気象関連災害による死亡者数は激減している (前編より続く)地球温暖化問題はどうなのか。やはり資本主義は環境を破壊し、ますます被害を拡大させているのではないか。2019年に16歳のスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ氏が国連のスピーチで述べたように、「〔気候変動により〕多くの人が苦しんでいます。多くの人が死んでいます。私たちは大量絶滅の始まりにいる。それなのに、あなたたちが話しているのは、お金のことと、経済成長がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!」(*1)と言いたくなる方もいることだろう。 だが、やはり事実を見てほしいというしかない。気象関連災害による死者は経済成長とともに大幅に減少してきた。人類はかつて自然と調和した素晴らしい生活を送っていたのに資本主義と経済成長のせいで、自然に復讐ふくしゅうされているといった物語は事実に反する。母なる自然は有史以前から
元アスリートが五輪廃絶を訴える理由 東京オリンピック・パラリンピックが閉幕した。大会前の開催の是非をめぐる喧騒がまるで嘘だったかのように静かだ。「五輪批判」は背景に退き、世間は新型コロナウイルスの感染対策に手一杯となっている。 すでにご存知の方もいるだろうが、私は一貫して東京五輪に反対の意を示してきた。東京五輪の中止とともに五輪そのものの廃絶を呼びかけてきたし、いまもその意思は変わらない。 元アスリートなのになぜ反対しているのか。それは道義に反することではないか。スポーツの恩恵を受けた身でありながら、その祭典である五輪を批判するのは恩知らずだろう――。 ツイッターのアカウントにはこうした声が相次いだ。スポーツ界から声を上げた数少ないひとりとして、その勇気を称賛する声が大半を占めたものの、一部では「身のほど知らず」という心ないことばが届けられた。社会的な発言に賛否はつきものだから反論を賜るの
いまや日本社会は外国人労働者なしには成り立たない。それは健全なのか。作家・相場英雄氏は最新刊『アンダークラス』(小学館)で、外国人技能実習生の問題を取り上げた。相場氏は「日本人は貧乏になった。だから労働力を外国人に頼らざるを得ない。その事実に気付いていない人が多すぎる」という――。(前編/全2回) ニューヨークでは「ラーメン一杯2000円」が当たり前 ——『アンダークラス』で技能実習生の問題に着目したいきさつを教えてください。 僕の仕事場は新宿・歌舞伎町の近くにあるのですが、この数年、人の流れが目に見えて変わってきました。 朝方、24時間営業のハンバーガーチェーンで、大きなバックパックを背負った配達員が眠りこけている。その隣には、たくさんの荷物が入った手提げ袋を抱えた若いホームレスが力尽きたように休んでいる。外には店内に入れずに一晩中、歩いている人がいる。しかも、ハンバーガーチェーンやコン
学校ではほとんど行われていない性教育。一方、最近家庭向けの本が次々と出版されており、性教育に注目が集まっている。長年学校現場で性教育に携わり、共著で出したコミックエッセイ『おうち性教育はじめます』が話題の村瀬幸浩さんと、「社会から性差別をなくすためには男の子の育て方がカギ」と説く弁護士の太田啓子さんが、日本の大人の「性」に対する知識の欠如について語った――。 私たちは、性についてまともに学んでこなかった 【太田】今、性教育に関心を持つ親が増えています。子どもにはしっかり教えなければマズいという「危機感」を持っているのですが、そもそも親たちも性について教えられていません。どう伝えればよいかもわからず、モヤモヤしているんじゃないでしょうか。 特に女性は、自分がこれまでに男性から言われたりされたりして嫌な思いをしたさまざまな経験から、「息子があんな男になってしまったらどうしよう」と思っている人も
32年もの間、村長の椅子に鎮座してきた 大分県東国東ひがしくにさき郡姫島ひめしま村(人口1930人、2017年3月1日時点)は、瀬戸内海にぽっかりと浮かぶ日本有数の「一島一村」の自治体である。 2016年秋、そんな島で、歴史的な事件が突然起きた。 〈61年ぶり村長選へ、来月の姫島村長選〉 同年10月18日、大分合同新聞がこんな見出しで大きく報じるなり、島には続々と報道陣が上陸してきた。8軒しかない旅館や民宿は季節外れの繁忙期に突入した。小さな村の騒ぎは大手紙の全国版でも報じられ、その名が知られることとなったのである。 姫島の村長選は1955年にあった一騎打ちを最後に、16回も無投票が続いた。その間、現職の藤本昭夫(取材当時73)は初当選時からじつに8度も不戦勝。つまり、32年も投票用紙に自分の名前が書かれたことが1度もないまま、島の主の如く村長の椅子に鎮座してきたというわけだ。
『葬式は、要らない』は30万部のベストセラーに 私は、2010年に『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)という本を出版した。事前には予想もしなかったことだが、この本は30万部のベストセラーになった。当時、私がこの本を書こうとしたのは、葬式をめぐる状況が大きく変わりつつあるのを感じていたからである。 たとえば、無縁社会のところでふれた直葬の存在を知ったのも、本を執筆する直前のことだった。そこまで葬式は簡略化できるのか、私は直葬の存在を知って驚いた。その頃にはまた、「家族葬」という葬式のやり方が広まりつつあった。 それ以前にも、近親者だけが集まって営む「密葬」という葬式のやり方はあった。ただ、密葬の場合には、その後に、参列者を招いて偲ぶ会を開くことを前提にしていることが多かった。密葬だけで終わるわけではなかったのだ。 ところが、家族葬の場合には、家族や近しい親族、故人の親友などが参列するだけで、規
教えたいのに生徒が集まらない 1970年5月。青年海外協力隊(JOCV)の隊員として岡本秀樹がシリアに派遣され半年近くが過ぎようとしていた。彼はこのとき28歳、空手を始めて12年になる。 時代錯誤の高下駄に「蒙古放浪歌」。しかも何を思ったか岡本は羽織袴はかま姿である。通りを行き交う地元住民が、怪訝けげんな顔でこの男の通り過ぎるのを見るのも無理はない。 一方、こうした芝居がかったことをしている岡本本人には時代錯誤の思いは微塵みじんもない。体中を突き抜けんばかりに沸き起こる怒りに自分が抑えられなくなっている。 岡本はこの国の若者に幻滅していた。シリアの警察学校で空手を教えていたが、この伝統武道の知名度は低く、生徒が集まらない。ブルース・リーの主演映画「ドラゴン危機一発」が香港で大ヒットするのは翌71年である。当時のシリアでは戦える技としてはボクシング、レスリングが主流であり、続いて自己防衛とし
日本で人工妊娠中絶を行うと、約15万円の医療費は自己負担で、手術では、金属製の器具で子宮内をかき出す「掻爬そうは法」が行われることが少なくない。だが、海外では真空吸引法と薬剤使用が主流だ。また「中絶無料」という国もある。なぜ日本は女性にばかり負担を押しつけるのか。産婦人科医の遠見才希子氏が解説する——。 推計では「日本女性の6人に1人」に中絶の経験がある 人工妊娠中絶(以下、中絶)は、さまざまな理由によって妊娠を継続できないときにその妊娠を中断するために行われる。日本には、明治時代(1907年)に制定された「堕胎罪」がいまだに存在しているが、1948年に制定された旧優生保護法(現在は母体保護法)によって、一定の条件を満たした場合の中絶が認められた。したがって、「堕胎」と「中絶」は異なり、中絶は日本では合法だ。 日本の総中絶報告件数は年々減少しているが、それでも年間16万4621件(※1)(
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