双葉町には、東京電力福島第一原発がある。2011年3月の原発事故で、町の面積の96%が人の住めない「帰還困難区域」となった。約7千人の町民全員が、北海道から沖縄まで全国38都道府県に散り散りに避難している。 今年の1月19日、双葉町長選挙が告示された。 「これじゃ、やりようねえべな」 解けきらない雪が残る仮設住宅の真ん中で、双葉町長の伊沢史朗(58)は、ただ一人立ち尽くしていた。10分ほど敷地内を歩き回ったが、誰にも会えない。 双葉町役場は、約60キロ南の福島県いわき市に仮住まいしている。ここで立候補を届け出たあと、町民がいるいわき市や郡山市の仮設住宅へ演説に向かった。公職選挙法が禁じる戸別訪問になるので、家々を訪ねることはできない。5時間かけて4カ所を回り、出会えた町民は40人ほどだった。 「本来の地方自治の選挙とはかけ離れている。一人ひとりの町民の声を聞けと言われても、無理だ」 午後5
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