上田安子服飾専門学校での「ゴシック&ロリータ論」の授業のために、ロココ時代の文化についてまとめている。ロココはロリータ文化の大きなイメージ源になっている時代だが、いま改めて思うのは、この時代の文化と政治の密接な関係だ。絶対王政下のフランスでポンパドゥール夫人がロココの花を咲かせているとき、実はイギリスではゴシックリバイバルが不吉な呻きを上げていた。ロココ文化と宮廷の結びつきは言わずもがなだが、実はゴシックと議会制民主主義の間には、奇妙な縁があちこちにあるのだ。 たとえばゴシック小説の粗であるホレス・ウォルポールは、イギリスの初代首相であるロバート・ウォルポールの息子であり、自身も国会議員だった。ホレス・ウォルポールはまたゴシック建築の中興の祖でもあったけど、英国議会の議事堂は19世紀の前半に焼けて、ゴシック様式で立て直されるに至る。やや遅れて初期ゴシック小説の傑作『ヴァテック』を書いたウイ