「コモンズ(共有地)の悲劇」ならぬ「アンチコモンズの悲劇」をご存知だろうか。「コモンズの悲劇」が稀少な資源が共有とされた場合に生じる過大利用の危険を警告し、資源の効率的利用を図るための私的所有権の重要性を再認識させたのに対し、「アンチコモンズの悲劇」は、研究成果の私有化に拍車がかかり過ぎると、知的財産権の“蔓延"(proliferation)を招き、有用な研究成果・技術の利用が妨げられる虞があることを指摘したものである。バイ・ドール法の制定から20年余りが経過し学術研究成果の特許化が進んだ米国では、知識の私有化(Privatization)がもたらす光と影が議論されている。90年代後半に入り、プロパテント政策、産学連携と米国の後を追い始めたわが国にとっても、「アンチコモンズの悲劇」は決して他人事ではないだろう。 カリフォルニア大学の生物学者であったハーディン教授は、1968年にサイエンス誌