「ねぇ、しつこいようだけどUSJのことはどうする?」 子ども達が寝静まった頃、妻は無表情のまま僕に尋ねた。 いや、無表情である気がしただけで、妻の顔は彼女の右手に収まったスマートフォンに向けられていた。 幾度となく聞かれたことだったので、ただ無表情である気がしただけだった。 「行けばいいんじゃないかな。」 僕の返答も、幾度となく繰り返されたものだった。 言うまでもないが、僕は仕事があるし、子ども達だって学校がある。 家族揃っての旅行を前もって計画するとなると、専ら夏ということになる。 『夏、どこに行くか。』 多くの家庭がそうであるように、毎年この時期になると決まって持ち上がる問題だった。 「じゃあいつから行くの?」 妻はこちらを見ている。 こちらを推し量るような、あるいは訝しむような目で。 元々、家計を預かる僕と、そうでない妻とでは何につけても温度差があった。 USJは昨年も行っているのだ