文化人類学の“静かなる革命”がもたらした「多自然主義」という視座は、現代において最も馴染み深い「多文化主義」の諸問題を炙りだした。僕たちはなぜ「多文化主義」から「多自然主義」へと向かうべきなのか。人類学者・奥野克巳に訊いた。 いかにして「存在論的転回」は起こったか HZ 近年、文化人類学において注目を集めている「存在論的転回」、あるいは“人類学の静かなる革命”については、僕もまた門外漢ながら関心を抱いてきました。とりわけ、ヴィヴェイロス・デ・カストロが「多文化主義」に対置する形で提出した「多自然主義」というアイディアには、それが人類学という学術領域を越えてもちうる可能性という点からも強く惹かれています。 この存在論的転回に関して、奥野さんはレーン・ウィラースレフの『ソウル・ハンターズ』、エドゥアルド・コーンの『森は考える』を始め、重要な研究書の翻訳を多く手がけられています。さらに昨年に奥野