昭和30年頃の世相をひとつの壁として,その時代に生きる4人の考え方の違う青年が,それぞれその壁に反応する仕方を描いたのが三島由紀夫氏の小説「鏡子の家」だ。 1人はボクサーで,「俺はその壁をぶち割ってやるんだ」と考え,1人はナルシストの俳優で,「僕はその壁を鏡に変えてしまうんだ」とボディビルに熱中し,1人は日本画家で,「僕はとにかくその壁に描くんだ」と思い立つ。さらに1人は,「俺が壁になるんだ。俺が壁自体に化けてしまうんだ」という有能な商社マンである。 そして4人がそれぞれの生き方をして,それぞれに失敗し,挫折する。 さて,私はなにも「鏡子の家」の解説をしようと思っているのではない。三島氏が小説の中で典型的なナルシストとして描いたボディビルダーについて考えてみたいのである。 その前にナルシシズムについて,ちょっと説明をしておきたい。 ギリシャ神話にナルシスという美少年が出てくる。見惚れるよう
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