1. はじめに 本年 6 月 12 日に、G8 科学技術大臣会合が英国、ロンドンで開催され、共同声明を発表した。同じ G8 と言っても、経済財政政策を担当する閣僚会合に比べると、メディアの扱いは小さかったが、この共同声明には、今後十年程度の間に科学研究活動の様相を一変させる構想が含まれている。共同声明の背景には、G8 の枠組みの中だけでも議論の蓄積がある。また、この議論と平行して、米国、英国、EU、豪州などでは、それぞれの科学技術政策の大きな転換が起こっている。この転換の全貌を報告することは、筆者の能力をはるかに超えるので、本稿では、ポイントを限定して、紹介することとする。 2.共同声明の内容 共同声明は、4 つのポイントから構成されている[1]。第一のポイントは、都市化、エネルギー安全保障、気候変動、生物多様性確保などの課題をグローバルに取り組むべき課題として認識し、その解決のためには、