都市の営みで少し霞む視界の先では青い空に入道雲が立ち込める― プールバックの塩素の匂いと開かれた窓から吹き込む風、煩わしく騒ぐ真昼間の喧騒から逃げるように彼はイヤホンを耳に付けて机に突っ伏す。 終わりを告げるチャイムに急かされるように教室を出て駅まで歩く。タイミング悪く発ってしまった地下鉄のテールライトを横目にベンチに座り、イヤホンの音量を少しだけ上げる。 しばらく薄暗いホームの電灯を見つめていると、突然、誰かが彼の肩を叩きこう尋ねた。 「何聴いてるの?」 もちろんこのアルバム冒頭の「何聴いてるの?」「リリィ・シュシュ。」という会話は岩井俊二監督作「リリィ・シュシュのすべて」からの引用(というかサンプリング)であるし、上記のような光景が実際にあったわけではない。 だが、このアルバムを初めて聞いた時―バンドキャンプの青い再生ボタンをクリックしてこの約1時間のサウンドトラックを聞き終えた時―、