もう20年以上前の話になるけれど、もし神の啓示というものがあるとしたら、あの時の僕がそうだったのかもしれない。 それは、当時CMプランナーとして一世を風靡していた電通時代の佐藤雅彦さんが、雑誌『宣伝会議』で、広告会社志望の甥っ子との手紙のやりとりを「タカシへの返事」というタイトルで連載していた時のこと。いよいよ崇クンの競合他社(!)への内定も決まり、連載も最終回を迎えることになり、佐藤さんは就職祝いのはなむけとして、次のようなメッセージを彼に贈ったのでした。 「本当は何がものを売っているのか、誰にも分からない」 え? 広告の天才なのに、何がものを売っているのか分からないって? 僕はショックを受けました。でも、考えてみると、僕らは普段、何かちゃんとした理由でものを買っているわけじゃないと、その時、ふと気づいたのです。 例えば、ふらりと入ったコンビニでチョコを買ったとする。恐らく、その2分前、