それぞれの主権を持つ複数の国が集まって、グループを結成し 通貨を統一する──これがユーロの構想です。ちょっと考えると 理想的なように見えます。しかし、この制度には大きな矛盾がた くさんあるのです。 最大の矛盾は、ユーロ圏の国は、財政政策と金融政策を分離し ていることです。ユーロ圏各国は、財政支出のため国債を発行す る財政政策は主権として持っているものの、金融政策はECBに 委譲してしまっているのです。これは、主権の一部を委譲したと といっても過言ではないのです。 ところで、このECB(欧州中央銀行)は、ドイツのブンデス バンク(ドイツ連邦準備銀行)をベースに設立されており、ドイ ツの銀行の伝統を受け継いでいます。ドイツの銀行の伝統とは、 「インフレハンター」です。ドイツは異常なほどインフレを嫌悪 する国です。日本銀行もそういう傾向があります。 したがって、ドイツのインフレ率が少しでも高めに