伊藤計劃の三作品をアニメ化する「Project Itoh」と連動し、版元をまたいでの出版企画が相次いでいる。本書もそのひとつだ。オリジナル・アンソロジー『NOVA+』(昨秋に第一弾『NOVA+ バベル』が刊行、本欄でも紹介)を一冊まるごと『屍者の帝国』競作にあてるという、ちょっと荒技の編集だ。いや、機を見るに敏というべきか。 先にハヤカワ文庫から出た『伊藤計劃トリビュート』も「Project Itoh」連動アンソロジーだが、そちらは伊藤計劃が提起したテーマ群を中堅若手作家が継承し、それぞれ独自の設定を起こしていた。いっぽうこちらの『屍者たちの帝国』は、伊藤計劃が敷いた設定(作品を仕上げたのは円城塔だが)を踏襲したシェアワールドだ。死体を復活させて労働や兵役に用いる「屍者テクノロジー」を主軸として、十九世紀末という時代背景、スチームパンク風の小道具、実在/虚構を取りまぜて個性的なキャラクター