ときおり、普通の人が、ただ普通に生活しているだけなのに、私と雑談しなければならないという不幸な状況に追い込まれることがある。「お仕事は何を?」というのは、通常であれば無難な話題だが、私の場合は答えが「哲学の教授です」になるため、場が静まり返ってしまうこともしばしばだ。ときたま、なんとか会話を繋ごうとしてくれる人もいる。ブルーカラーの仕事をしている人が、興奮した口調で「哲学か、いいじゃないか。俺も自分なりの哲学を持っているよ。また飲みにでも行って話そう」と言ってくることもある。一方でテックブロたちは本好きらしく、「ルネ・ジラールについてどう思う?」と聞いてくることが多い [1]訳注:ジラールはピーター・ティールが好んでいる思想家であり、そのためテック業界では人気が高い。 。あるいは、「ユヴァル・ノア・ハラリってどう?」と聞いてくることもある。 実際、つい先日も、私にハラリの話題を振ってきた人

