新幹線のシートを例に考えるとわかりやすい。たとえば東海道新幹線N700系の3人掛けシートの1人当たりシート幅は窓側・通路側の席が44センチ、真ん中の席が46センチである。真ん中の席が窓側・通路側の席よりも2センチ広いにもかかわらず、窓側・通路側の席のほうが広く感じる。その理由は、窓側の席に座っている乗客は窓の方へ、通路側のシートに座っている乗客は通路の方へ、それぞれ肩やひじを逃すことができるためだ。 「かつての国鉄車両は、ロングシートの両端に座る人が肩を外側に逃がすことで全体の窮屈さを解消していた」と、大森氏は言う。肩を外側に逃がすことで、両端の人はシートの端のほうに体を寄せることになる。このため隣の人との隙間がやや広がり、隣の人の快適性が高まる効果がある。最近の板型の仕切りは、座っている人の肩やひじをある程度逃せるように板の中にくぼみを設けているが、逃せる範囲は板の厚さに限られる。 こう