「新しい経済の教科書 2012」で、新自由主義者としてケインズ批判を展開した八代尚宏・国際基督教大学客員教授。学説論争にとどまらず、現在の政府の失敗についても舌鋒鋭く批判を展開しています。デフレ脱却のためには、金融政策や規制緩和だけでなく、耕作放棄地への規制強化なども含めた抜本的な構造改革を進めよ、と主張。八代教授による新自由主義的な構造改革論について、2回に分けてお届けします。(聞き手は広野彩子) 昨年、『新自由主義の復権』(中公新書)という本を出版されました。政府の失敗に深い問題意識を持っておられます。 八代:新自由主義とは一般に誤解されているような自由放任主義ではなく、市場機能を適正に働かせるための政府の役割を重視したものです。日本では経済成長率が平均1%弱の経済停滞がもう20年も続いています。現政権は再分配政策には熱心ですが、その原資となる所得を増やすための成長戦略への関心が薄い。