問題に直面した技術者は、ときに煮詰まってしまうこともある。視野が狭くなって原因を決めつけてしまうこともある。その「決めつけ」こそが、技術開発の最大の敵だと、渡辺は考える。「決めつけ」にかかった部下を前にしたとき、渡辺は、あえて突拍子もないことや常識ハズレの提案をする。そのこころは、頭をマッサージするということ。部下が柔軟な発想ができるように、冗談めいた提案をふっかけ、ほかに手段がないか考えさせるのが、最高技術責任者としての渡辺の流儀だ。 人材の流動性が極めて高いシリコンバレー。ベンチャー企業の成否は、どのような技術者を会社に引き込むかで決まると、渡辺は考える。採用にあたっての渡辺の最大の流儀は、「破壊分子」を重用すること。革新的な技術を生み出す能力を持った人材は、ときに組織全体の方向性とは違うことを勝手に進めたり、既成概念を壊すような提案をすることもある。しかし、彼らの破天荒な発想を伸ばす