山手線で上野駅に向かう途中、佐々木は居眠りをしてしまい、目覚めると東京駅の医務室にいた。ひどい頭痛がしてベッドから起き上がることができなかった。数時間後、ようやく立ち上がり外へ出たとき、持っていたはずの紙袋がなくなっていることに気づいた。 佐々木はその日、上野の国立科学博物館の地下23階にある日本秘密研究所へ向かっていたのだった。研究所への入り口は秘密になっていて、展示されているヒグマの口に、ICチップが埋め込まれた木彫りのマスを差し込むと床が地下23階へと急降下する仕組みになっている。佐々木に残されたのは、内ポケットに入れてあったそのマスだけだった。あとの荷物はすべて何者かに奪われてしまったらしい。佐々木は研究所のボスのことを思った。研究所のボスは20年前に肉体を失っており、特殊な溶液に入れられた脳髄だけが存在している。脳髄ケースからは、赤・青・緑・黄緑の四色のコードがのびていて、電光掲