生まれてから四半世紀を過ぎるまでずっと、粉薬を飲むのが苦手だった。幼い頃、母親から教えられた飲み方は、舌をUの字型に曲げたところへ粉をさらさらと流し入れるというものだったけれど、まず舌をU字型にできなかったし、舌の上に粉薬をのせると薬を味わってしまい、その味が気持ち悪くて吐いてしまうこともあった。 結婚してから妻に教わった飲み方は、舌の下にある歯に囲まれた空間に少し水をためておき、そこへ粉薬を流し込むというもので、この方法なら薬をあまり味わうことなく飲めるのでかなり楽になった。教わるまでずっと病院に行くたびに(粉薬を出されたらどうしよう)とびくびくしていた。他にも怯えることはやまほどあった。物心ついた頃からとにかく心配性で、公園で遊んでいてもどこかで頭をぶつければ脳内出血で死ぬんじゃないかと不安になった。トイレで用を足せば、またすぐにしたくなるんじゃないかと不安になってトイレから出られなく