パワハラ上司に長時間労働を強いる空気――。働くのが苦しくなってしまう職場がなくならないのはなぜか。考え続けている産業医がいる。 心身の健康を保ちながら働けるよう、専門的な立場から指導・助言してくれる「産業医」は、企業や従業員にとって大切な存在だ。長年にわたって精神科の産業医を務めてきた筑波大教授の松崎一葉さん(59)は、15年ほど前に大手企業の役員から言われた言葉が忘れられないという。 部下追い詰め成果 「メンタルヘルスなんてやめてくれ。おれは部下を5人つぶして役員になった」 部下を精神的に追い詰めながら成果を出し、どんどん出世していく人。松崎さんは「クラッシャー上司」と名付けた。 産業医として接した職場で、クラッシャー上司が一定割合で存在したという実感がある。彼らを分析した本を2年前に出したところ、「うちにもいます」「上司がそうです」などと切実な反響が広がった。 クラッシャー上司は、激し