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  • 生命の本質を分子間の相互作用の中に見出す新しい分野──『相分離生物学の冒険――分子の「あいだ」に生命は宿る』 - 基本読書

    相分離生物学の冒険――分子の「あいだ」に生命は宿る 作者:白木賢太郎みすず書房Amazonこの『相分離生物学の冒険』は、米国の学会では2018年からよく取り上げられるようになってきた、最新の生物学分野の研究テーマである「相分離生物学」について書かれた一般向けのノンフィクションである。著者の白木賢太郎はこの分野の研究者で、東京化学同人社などですでに相分離生物学の著作のある研究者だ。 相分離生物学とは何なのか。 僕は相分離生物学のことは名前すらも覚えがない(読んだことぐらいはあるのかもしれないけど)状態で読み始めたが、これはおもしろかった。現代の我々は人体を構成する要素についてかなりの部分わかってきている。DNAの解析も進み、どんなタンパク質で人体が構成されているのかも、あらかた把握できているといえるだろう。 では、そうして判明した人体の構成要素をピンセットで並べていったら、素材が完成した段階

    生命の本質を分子間の相互作用の中に見出す新しい分野──『相分離生物学の冒険――分子の「あいだ」に生命は宿る』 - 基本読書
    kotetsu306
    kotetsu306 2023/03/20
    福岡伸一の「動的平衡」を連想した。もっと定量的にアップデートされた感じなのかな?
  • 社会に分断をもたらした「自分自身の努力と勤勉さ」で成功したという考え──『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 - 基本読書

    実力も運のうち 能力主義は正義か? 作者:マイケル・サンデル発売日: 2021/04/14メディア: 単行この『実力も運のうち 能力主義は正義か?』は『これからの「正義」の話をしよう』が大ヒットした、マイケル・サンデル教授の最新作である。『それをお金で買いますか 市場主義の限界』など、毎回その時代に問われるべきテーマを取り上げてきたサンデルだが、そんな彼が今回注目したのが「能力主義」だ。これは、現代の「分断」の原因を的確に写し取っているように感じられて、非常におもしろかった。 分断というキーワード アメリカ大統領選におけるトランプバイデンの接戦、イギリスのEU離脱、ポピュリストたちのエリートへの怒りなど今世界中で「分断」がキーワードになっているが、その要因の一つがこの「能力主義」にあるとサンデルは語る。たくさん勉強や努力をして良い大学に入り、良い仕事と賃金を得る。それに成功した人はその

    社会に分断をもたらした「自分自身の努力と勤勉さ」で成功したという考え──『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 - 基本読書
    kotetsu306
    kotetsu306 2021/04/15
    抽選入試にアファーマティブアクション入れると、努力じゃなくて環境の厳しさを競うようになって、親が敢えて離婚とか失職したりしそう / 保育園入園のための保活に近いかも
  • 寿命が短くなっていく国アメリカで何が起きているのか──『絶望死のアメリカ――資本主義がめざすべきもの』 - 基本読書

    絶望死のアメリカ――資主義がめざすべきもの 作者:アン・ケース,アンガス・ディートン発売日: 2021/01/18メディア: Kindleアメリカでは今、絶望死が増えている。絶望死とは、アルコールや薬物依存による死亡、自殺の死因をまとめたもので、45歳から54歳の白人男女による絶望死は、90年には10万人中30人だったのが、17年には10万人中92人まで増えた。自殺率も、アルコール性疾患による死亡率も、薬物の過剰摂取による死亡率も増加している。 20世紀から21世紀にかけて、糧事情も改善し医療の発展があったこともあって、死亡率は改善されてきた。アメリカでも、45〜54歳の白人が心臓病で死ぬリスクは、80年代までは年平均4%で落ちていた──が、90年代には2%に鈍化、00年代には1%にまで落ちて、10年代からは逆に上がり始めた。ここでは中年の白人に限定しているが、若年層の絶望死も増えて

    寿命が短くなっていく国アメリカで何が起きているのか──『絶望死のアメリカ――資本主義がめざすべきもの』 - 基本読書
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    kotetsu306 2021/02/12
    「わざとやってる」は主体が不明なので陰謀論くさくなるけど、「積極的に改善しようとする人が少ない→結果的に故意に放置したみたいになってる」とは言えそう
  • 続きがでなくて悲しかった最近のSFたち - 基本読書

    25日発売のSFマガジン2020年10月号、ハヤカワ文庫SF50周年号で、50周年を記念して渡邊利道さん、鳴庭真人さんと僕の3人で座談会をやっています。 SFマガジン 2020年 10 月号 発売日: 2020/08/25メディア: 雑誌あまり明確なテーマはなくざっくばらんに最近のハヤカワ文庫SFや創元SF文庫について話そう、といったかんじで楽しく話したんですが、その座談会に備えて近年(5年ぐらい)のラインナップを見返したり、どのジャンルが何冊ぐらい出ているのかを数えていたら、「そういえばこれ続きが結局出なかったな……」とか、「というかなんで出なかったんだよ!!」と怨念が蘇ってきたので、供養代わりに記事にしようかと思います。ちなみに早川の編集さんにはその場で続きを出せ! といってます。 ラメズ・ナム『ネクサス(上・下)』 ネクサス(上) (ハヤカワ文庫SF) 作者:ラメズ ナム発売日: 2

    続きがでなくて悲しかった最近のSFたち - 基本読書
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    kotetsu306 2020/08/26
    J.P.ホーガンの「揺籃の星」「黎明の星」の続きみたいな話かと思ったら違った(三部作の予定だったが作者死没)
  • あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書

    宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版宇宙【そら】へ 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者:メアリ ロビネット コワル発売日: 2020/08/20メディア: Kindle版この『宇宙(そら)へ』は、メアリ・ロビネット・コワルによる、1950年代の女性の計算者&パイロットの物語を描き出す、宇宙開発系のSFである。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞というアメリカの主要SF関連賞を総なめにした、SFにおける今年最大の話題作のひとつ。僕はそもそも、SFとしては現実的な科学に根ざして宇宙を舞台に展開する物語、宇宙開発系と言われるサブジャンル全般が特に好きだから、作にも大いに期待していたんだけど──いやーこれはおもしろかった! 主な舞台となっているのは先に書いたように1950年代のアメリカだが、この世界は我々の

    あり得たかもしれない宇宙開発史を描き出す、主要SF賞総なめの話題作──『宇宙へ』 - 基本読書
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    kotetsu306 2020/08/21
    SFの邦題って過去の作品のパロディ多くない?「火星の人」だって「家裁の人」ぽいし
  • 言葉の骨によって駆動される、砂上の文明都市を描く砂漠SF──『言鯨16号』 - 基本読書

    言鯨【イサナ】16号 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 九岡望出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/01/22メディア: 文庫この商品を含むブログを見る『エスケヱプ・スピヰド』の九岡望のハヤカワ文庫JA単著初登場作がこの『言鯨16号』だ。言鯨とは「イサナ」と読み、全土が砂漠化している世界の創造者、神であると捉えられており、作はそんな言鯨の骨をエネルギーの源や擬似的な科学技術のように用いることで動き続けている世界が舞台のSF/ファンタジィである。ナウシカにデューン、『クジラの子らは砂上に歌う』などの名作揃いの砂漠SF/ファンタジィに新たな風を吹き込む一作。何はともあれ、世界観がまず最高なんだよなあ! ざっとあらすじを紹介する 中心となる旗魚(カジキ)という人物は、この砂上文明の根底を支える言骨を各地から拾い集めて様々な用途に合わせて加工する工場へと運び込む、骨摘みという職業についてい

    言葉の骨によって駆動される、砂上の文明都市を描く砂漠SF──『言鯨16号』 - 基本読書
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    kotetsu306 2019/02/04
    クラッカーとチーズとワインで~ (これは12号だった) / 世界設定は「きれいな『皆勤の徒』」?
  • 転生したら人工知能にさせられ、有無を言わせず居住可能惑星探査に送り出された件──『われらはレギオン1 AI探査機集合体』 - 基本読書

    われらはレギオン1 AI探査機集合体 (ハヤカワ文庫SF) 作者: デニス・E・テイラー,EVILVIT,金子浩出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/04/04メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見るSF大会に欠かさず参加し誰かれ構わずSFネタを喋り散らすクソSFオタクであるボブは、無神論者で、人体冷凍保存会社(死亡した直後に頭部のみを切断し、未来の技術が生き返らせられるようになるまで保存しておく会社。ちなみに実在する。)と契約するような人間だが、そんな彼がある日突然の交通事故で死んでしまう──。 意識を取り戻した彼がいるのは、なんと117年後のキリスト教原理主義国家となったアメリカ。そのうえ彼は生身の身体を持たない複製人(レプリカント)*1となっていた! 国家の所有物となった彼に与えられた任務は居住可能惑星探査! 自己増殖する自動恒星間探査機に知的機能の制御係とし

    転生したら人工知能にさせられ、有無を言わせず居住可能惑星探査に送り出された件──『われらはレギオン1 AI探査機集合体』 - 基本読書
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    kotetsu306 2018/04/07
    宇宙船の人工知能を主人公にした作品は国産SFでたくさんあるけど、転生なのが新しい? / 小川一水「青い星まで飛んでいけ」、円城塔「バナナ剥きには最適の日々」、六冬和生「みずは無間」…
  • きっと、もっと猫が好きになる──『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』 - 基本読書

    SF傑作選 は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者: シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他,中村融,旭ハジメ出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2017/08/31メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見るSFといえば、犬よりものイメージが強い(犬SFの傑作もたくさんあるけど)。『夏への扉』はもちろん、コードウェイナー・スミスの『鼠と竜のゲーム』、神林長平『敵は海賊』シリーズ、秋山瑞人『の地球儀』など、SFは傑作だらけだ。 というわけで書は書名通りのSF傑作選である。シオドア・スタージュンからフリッツ・ライバー、ロバート・F・ヤングまで10人の作家による10篇のSF短篇が収められている。アンソロジーの特徴としては、スミスの「鼠と竜のゲーム」などド定番の物が一部入っていない代わりに、邦初訳が4篇、それ以外もほとんど入手・読むのが困難だった作品ばかりが揃

    きっと、もっと猫が好きになる──『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』 - 基本読書
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    kotetsu306 2017/09/22
    ネコと宇宙で和解せよ
  • 「科学と信仰」の葛藤を描いたオカルティックSF──『彼女がエスパーだったころ』 - 基本読書

    彼女がエスパーだったころ 作者: 宮内悠介出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/04/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る主にボードゲームを扱ったデビュー作『盤上の夜』以後、新作を出す度に「今度は火星で精神医学!」「今度は音楽か!」と随分とかけ離れた題材を扱ってきた宮内悠介さんだが今回はなんと疑似科学を扱った全6篇の連作短篇集である。これがとてつもなく居心地の悪い、割り切れない世界を描きながらも──最後は見事に抱擁してみせる作品で、『ヨハネスブルグの天使たち』以来3年ぶの短篇集ということもあって「やっぱ宮内さんめちゃくちゃ短篇を書くのうまいなあ」と大満足した一冊である。 全体のざっとした紹介 全体をざっと紹介すると、第1篇「百匹目の火神」は火の使用を覚えた猿が、その技術を伝え各地を歩くことで猿たちが放火を始めたら──という共時性を扱った短篇。第2篇は容易

    「科学と信仰」の葛藤を描いたオカルティックSF──『彼女がエスパーだったころ』 - 基本読書
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    kotetsu306 2016/04/26
    架空のニセ科学を題材にしたSFと言えば、小川一水の短編「グラスハートが割れないように」があるけど、もっと直接的に実在のニセ科学をネタにした感じなのかな
  • 知能の高いヤツがバカなことをする理由──『知能のパラドックス』 by サトシ・カナザワ - 基本読書

    知能のパラドックス 作者: サトシ・カナザワ,金井啓太出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2015/07/24メディア: 単行この商品を含むブログを見る「知能のパラドックス」と書名にもなっているとおり(原題はthe intelligence paradox)、知能が高いことが=賢い、素晴らしいことにはならない、知能が高いからこそバカなことをするヤツラが出てくる理屈を提示する一冊で、そのパラドックスはこれから説明していくとわかると思うが、かなり面白い。 知能のパラドックス仮説を正しいとするならば、背の高い人や社交的な人が、そうでない人より価値が高いとか優れていることとは別であるように、知能が高いことも低いこともそうした良いこともあれば悪いこともある単なるステータスの一つとして受け入れられるようになるだろう。ただ、その仮説を補強するように集められているデータとそこからひねり出された理屈

    知能の高いヤツがバカなことをする理由──『知能のパラドックス』 by サトシ・カナザワ - 基本読書
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    kotetsu306 2015/07/24
    知能が高い人が日常的なことにうまく対応できる"とは限らない"なら妥当だが、知能が高い⇒日常ダメ、と決めつけてるところがこの仮説の危うさの根源か
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