次々と木々に生い立つ新葉のみずみずしさ、そこにきらめく無数の光…初夏の到来を告げるものです。外を歩くのも気持ちのよいこの季節、いつもより長めの散歩から帰ってくれば、「さあ、何かすっきりした酒で一杯!」と催促してみたくなります。 ちょっと珍しい、夏の焼酎の楽しみ方を、江戸後期に書かれた『守貞漫稿(もりさだまんこう)』に読んでみましょう。 「京坂、夏月には夏銘酒柳陰(やなぎかげ)と云ふを専用す。江戸は本直し(ほんなおし)と号し、美琳と焼酎を大略これを半ばに合せ用ふ。…ともに冷酒にて飲むなり」。 みりんと焼酎を半々で混ぜたものを、江戸では「本直し(ほんなおし)」、京阪では「柳陰(やなぎかげ)」と呼び、冷やで飲んでいたことが分かります。とくに「柳陰」は“専用す”とまで書かれていますから、京阪の夏場の銘酒として親しまれていたようです。 この時代、焼酎といえば一般的に粕取り焼酎を指しています。すっきり