2年前(2017年)に鬼籍に入ったアメリカの大御所ジャズコラムニストであるナット・ヘントフが1964年に著した、ジャズをテーマにした青春小説が「ジャズ・カントリー」だ。半世紀を経てもなお、ジャズの真髄を描く名著として、いささかも色褪せていない。 ジャズの核心に迫る名著N.ヘントフ著「ジャズ・カントリー」 舞台は1960年代のニューヨーク、ジャズに憧れトランペットの習得に励む高校生トムが主人公だ。 彼はジャズの巨匠モーゼス・ゴッドフリーを心底尊敬し、自分の将来の目標としている。このモーゼスのモデルは、実在の巨匠セロニアス・モンクだと言われている。 一方彼は、大学への進学という選択肢が本来の自分の目指す道であり、彼の親もそう望んでいることも理解している。ジャズ音楽の世界に入りたい気持ちとのせめぎ合いという、進路の悩みも抱えている。 そんな青春の懊悩を心に燻らせながら、少年は勇気を振り絞って、黒