お吸い物、麺類のスープの調味料として出汁をとったり、料理に混ぜたり、サラダなどのトッピングにしたりと、現代日本の食生活に欠かせないかつお節だが、この誕生から一般化の過程は、日本、沖縄、そしてインドネシアやミクロネシア連邦に至る広大なかつお節ネットワークの形成を特徴としている。 現在のかつお節の原型が誕生した江戸時代中期から現在までの三百年、日本から東南アジア諸地域までの四千キロに及ぶかつお節ネットワークはどのようにして形作られてきたのか、かつお節生産に携わった様々な人びとのオーラルヒストリーを丁寧に集めつつ、その緩やかなグローバル化の過程を鮮やかに描いた一冊である。新書ながらなかなか読み応えあって面白かった。 干物や燻製などのかつお節の原型はかなり古くから存在していたが、現在のようなかつお節が生まれたのは江戸時代中期、十七世紀末の土佐だったと言われている。土佐から紀州へと製造法が伝わり、大