ジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれるハーバート・ジョージ・ウェルズによって1895年に発表されたSF文学の古典。タイム・トラヴェラーを自称する男の館で町の名士たちが集まっての晩餐会、タイム・トラヴェラーは自身が訪れた八十万二七〇一年の未来世界での冒険を語るというもの。 タイム・トラヴェラーは、終始、胡散臭い、信用置けない人物として描かれているのが面白い。誰も彼の言うことには眉に唾をつけているが、その一方でもしかすると・・・とも思っている。その絶妙な雰囲気が最高だ。一度目の晩餐ではタイムマシンの紹介に留め、新聞社の主筆が訪れた二度目の晩餐で、偶然未来から帰ってきた満身創痍の状態で現われタイム・トラベルの体験談を語り出すところの、”タイミングの良さ”がまた、にやにやさせられる。 タイム・トラヴェラーが語る嘘とも真ともしれぬ未来世界の人類は、文明の成熟と進歩の果てに争いの無い平和な社