ジャンヌ・ダルクは世界史上屈指の有名人だ。現在、我々が知るジャンヌ・ダルクの事績は同時代の書簡や文書、関係者の日記、歴史家の記録類とジャンヌ・ダルクの異端審問記録の彼女の証言などを除くと、大半は1455~56年に行われたジャンヌ・ダルクの異端判決取り消しを目的とした復権裁判での関係者の証言に基づいている。我々が良く知るジャンヌ・ダルク像はジャンヌ・ダルクと同時代を生きた人々の、いわば「思い出」として語られた姿である。 本作「ジャンヌ」はジャンヌ・ダルクの死から9年が経った1440年初頭に物語が始まる。かつてジャンヌ・ダルクを送り出したロレーヌ地方ヴォークルール城主ロベール・ド・ボードリクールに男子エミールとして育てられた17歳の少女エミリーが、当時勃発していた諸侯反乱「プラグリーの乱」で国王シャルル7世派として参戦を決意する。エミールは幼い日、ジャンヌ・ダルクと出会った思い出を胸にシャルル