私たち佐賀県民は、アニメ「ゾンビランドサガ」の世界の中にいる。作中の風景は県内に実在し、そこに自分の姿を想像することもできる。きっと佐賀県民ならではの楽しみ方だ。タイトルから佐賀を冠し、登場人物は「佐賀を救う」と繰り返すのだから、もはや佐賀はもう一人の主人公と言える。 これほど地域色を全面に押し出しているのに、佐賀をよく知らない人も置き去りにしない魅力がある。ゾンビがアイドル活動で佐賀を救うという突飛な設定と個性際立つキャラクターがギャグを満載にする一方、適度な謎を含むシナリオに声優陣の演技と歌、粒ぞろいの楽曲が掛け合わされ感動を呼ぶ。実際の人間の動きを取り込むモーションキャプチャーを駆使したアニメーション技術にも驚かされる。人気が出ないはずがない。 「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」とは江戸中期の佐賀藩士・山本常朝による「葉隠」の一節。国のための死を賛美するものと戦後は禁書扱いも受けた