ある意味、トニー・ソプラノ、ウォルター・ホワイト、ドン・ドレイパーの成功の影には、このプロレスのアンチ・ヒーローの存在がある。 ハルク・ホーガンは真夏のフロリダ州のどこかにいた。どこにいるかはそれほど重要ではない。カレンダーの真ん中の月にフロリダにいるのだ。どうせ、蒸すとか暑いとかいう言葉では表現しきれない気候なのだ。ホーガンは数千人の群衆の前に立ち、ブーイングを浴びせられ、ありとあらゆるものを投げつけられている。いよいよ誰もが、ホーガンの正体を見破ったかのようだ。彼は、自身が長年喧伝してきた"リアル・アメリカン"なヒーローなんかではない。ハルク・ホーガンは悪人である。彼はあらゆる人を裏切る。 悲しいことに、これはテリー・ジーン・ボレアとして生まれ落ちた男の現代版ではない。あるいは、ジェブ・ランド(Jeb Lund)言うところの"誇大妄想で固められたキャリアを通じてプロレス業界を遠ざけ続け