イラスト 小幡彩貴 タイには「カイ・ルーク・クイ」という、世界的にもひじょうに珍妙な卵料理がある。 珍妙の理由は二つあるが、まずはその調理法。これは「ゆでタマゴを揚げた料理」なのだ。タマゴをゆでた後に揚げるなんて普通は誰もしない。まずそこからしてヘンなわけだが、これは屋台料理でもなければ家庭料理でもない。かといって普通のレストランや食堂のメニューにもない。宴会料理の一つだという。 一度、知り合いのタイ人シェフに作り方を見せてもらって納得した。けっこう手がかかっているのだ。 この料理の陰の主役はソース。強い酸味をもつタマリンドの熟した果実をお湯で溶かし、それにふんわり甘いココナツシュガーを混ぜる。さらに市販のフライドレッドオニオン、ナンプラーを加え、スプーンでずっとかき混ぜながら五分ぐらいかけて煮詰める。 次は主役のタマゴ。こちらはシンプル。鍋にたっぷりの油を強火にかけ、そこに殻をむいたゆで