今年で来日20年になる上海人がこんなことを言う。 「日本は中国よりずっと社会主義の国みたいだよねえ」 高い経済成長を続ける中国に対し停滞する日本。そんな形勢の逆転に積年の在日生活の労苦が報われたと言わんばかりの口ぶりである。聞き流しておけばいいのだろうが、ひとこと言い返したくもなる。 「ちょっと待ってよ。そもそも中国は共産党の指導する社会主義国でしょう。格差と不平等がこんなに拡がっているのに、よく平気でそんなこと言ってられるねえ」 呆れてたしなめると、一瞬苦々しい顔つきになり、「社会主義は過去のもの」とすぐに反論する。迷いはない。なさすぎる気もするが、無理もない。彼のような1980年代出国組は「社会主義」の閉塞感に焦りを感じて、若き日海外に出た。国家に頼らずひとりで生きてきたわけだ。そのぶん、この10数年の中国政府の数々の政策変更により(それは「革命」とも呼びうるものだ)生活保障の基盤を失
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