あるときは天体の動きから天災を言い当てる予言者。あるときは平安京を脅かす魑魅魍魎(ちみもうりょう)を退治するゴーストバスター。今日、平安朝の陰陽師(おんみょうじ)・安倍晴明は、人々を恐怖に陥れる「妖(あやかし)」から都を守るヒーロー的存在として広く認識されている。 このようなイメージが定着したのは、晴明をあたかも超能力者のように描いた小説や映画、漫画などのヒットが背景にある。 しかし晴明についての伝説的逸話を語っているのは現代だけではない。晴明が死んだ直後から、彼は神秘化され始めていた。 平安後期に成立した歴史物語「大鏡」では、天文を観測した晴明が、花山天皇の退位を予知したとされる。 鎌倉前期の説話集「宇治拾遺物語」には、陰陽道を用いて池の蛙を殺すよう公卿にせがまれた晴明が、草をちぎって作った式神(陰陽師が操るとされる鬼神)で蛙をたやすく殺したという逸話が描かれている。 こうした伝説は他に