三遊亭円朝『塩原多助一代記』 『真景累ヶ淵』があまりに面白かったので、調子に乗って同じ円朝の作で『塩原多助一代記』を読む。これも大当たり。 国民的教養だった「塩原多助」 塩原多助の物語は昔から気になっていた。 一番最初に知ったのは実は漫画版の『サザエさん』。テレビ版とちがい、漫画版は時事ネタのオンパレードなのだが、そこで信号の色の呼称が「青」から「緑」に正式にかわった、というネタを織り込んで、カツオが学芸会において愛馬・青との別れを演じ青を「ミドリよ」と呼ぶ漫画があった(ところで現時点ではウィキペディアによれば「青信号」が正式なそうであるが、あの漫画は一体なんだったのだろう?)。オチのコマで「塩原多助はアオでいいんだって!」と先生がとびこんでくる。これが塩原多助との最初の出会いである。 この主人公多助が愛馬・青と別れるシーンはどうも大変に有名らしく、その後もちょっとした小ネタとしてよく聞い