治りませんように―べてるの家のいま [著]斉藤道雄[掲載]2010年4月11日[評者]平松洋子(エッセイスト)■生の意味求める崖っぷちの真情 虚を突かれた。 「治りませんように」 奇妙なタイトルにぽかんとして、しだいに混乱する。病気が治らないよう願う者など、いるはずがないではないか? これは十年の取材にもとづく記録と思索を杖(つえ)に、人間の生きる意味をもとめる一冊である。舞台は北海道の南、襟裳岬にちかい浦河町「べてるの家」。「べてる」は旧約聖書で「神の家」の意味だ。精神障害を患うひとびとの共同体として約三十年、現在のメンバーは約百五十人。介護や福祉事業、NPOなどを運営し、精神科医やソーシャルワーカー、家族らが支える。異色の存在として知られる活動の主体は、患者じしん。病気をわが財産と位置づけてつらい現実を受け容(い)れ、社会との関係を保ちながら回復をめざす。 「苦労の哲学」。これが「べて