先月の初めに、「ABC予想」という数学の超難問を、望月新一氏という数学者が解決したというニュースが日本中を駆けめぐりましたが、この件ほどには話題にはならなかったものの、仏教学の分野でこれに相当するのではないかと思われる画期的な業績が、2年半前に一人の日本人研究者によって成し遂げられました。大竹晋氏による、『大乗起信論成立問題の研究: 『大乗起信論』は漢文仏教文献からのパッチワーク』が、それです。 望月新一氏の「宇宙際タイヒミュラー理論」については、残念ながら私はその1文字すら理解することができませんが、こちらの大竹晋氏のお仕事ならば、たとえ門外漢でもその有り難さの一端には触れてみることができるのではないかと思い、この外出自粛の連休中に一念発起して、氏の大部な著書を紐解いてみました。 そこには、やはり私には読めもしないサンスクリットの文字や漢文の白文もたくさんあったのですが、それでも研究全体