愛煙家なら経験があるかもしれないが、海外旅行先でタバコを買おうとしてギョッとすることがある。例えば、シンガポールで売っているタバコのパッケージを見ると、どれも喫煙によって真っ黒になった肺の写真や、ヤニで汚れた歯、ときには脳出血に侵された患者の写真などが大きく印刷され、銘柄すら判別するのが難しいほど。 それは有害性をより生々しく見せることで、タバコの購買意欲を削ぐ工夫であり、法律で定められている国もある。日本では中・高校生など生活指導の一環として“禁煙教室”を開く学校が増えたので、スモーカーの黒い肺とノンスモーカーのピンクの肺を見比べた記憶のある人も多かろう。 しかし、いまや常識のように語られている「喫煙→肺が黒くなる」との説は医学的に根拠があるのだろうか。 かつて肺がんで亡くなった患者の病理解剖に立ち会ったことがあるという都内の内科専門医が話す。 「確かにその方は肺が真っ黒でしたが、これま