安全とは、危険を認識することに始まる――原発事故によせて 奥山 修平/中央大学法学部教授 専門分野 現代科学技術論 「事故は、人知を尽くしても起きる」。これは、宿命論としてではなく「念には念を入れよ」という意味で、安全対策の現場でよく言われる。ただ現実の事故は、人知を無視して起きた場合がほとんどだ。 原発が世界でブームとなり、各国で原発建設が進められたのが、40年ほど前の1970年代である。福島第一原子力発電所の6つの原子炉は、1971年に1号機が運転を開始し、以後順に、74年、76年、78年(4号機、5号機)、78年と稼働していった。この70年代の安全性議論を振り返ってみよう。 1975年にアメリカ原子力規制員会は『原子炉の安全性研究』を公表。これは原発事故の危険性の評価を行った有名な報告書である。以後原子力発電を推進する人たちは、これにより権威ある機関が原発の安全性を保障した、とする。