どんなジャンルの写真でも適切なレンズの選択は重要な課題だが、野生動物撮影現場では即応性が要求されるため、選択を誤ると痛い目にあう。 2009年10月、薄曇りのある日、私は南アフリカのクルーガー国立公園で取材を行っていた。その日は早朝からあまりめぼしい被写体に出会えておらず、車を運転するうちに太陽は頭上に到達していた。昼間は動物にとっても人間にとっても一番ダルい時間帯だ。 そんな時だった。ふと道端に目をやると、草の間にうずくまる黄色と黒の毛の固まりが視界へ飛び込んできた。一瞬状況が飲み込めず、それがヒョウであると気付くまでにわずかながら時間がかかった。昼日中、超至近距離でヒョウに遭遇するなどめったにない出来事なのだ。 たちまち眠気は吹っ飛び、心拍数が一気に上昇した。すぐさま撮影態勢を整えねばならないが、急停車すると相手が驚いて逃げてしまう。そこで、まずはそのままやり過ごし、数十メートル先まで