史学・民俗学・解釈学──今和次郎再考 | 黒石いずみ History, Folklore, Critical Studies: Wajiro Kon Reconsidered | Kuroishi Izumi カルロ・ギンズブルグ 一九七三年にジョセフ・リクワートが『アダムの家』を著わしたとき、イギリス建築史学会の重鎮E・H・ゴンブリッチは、その書のタイトルが「天国の家」であるのにかかわらず実際は「地上の家」を扱うものだったことを揶揄した。そして、その論理が推測によって異なる文脈にあるものを連結することで成り立っており、歴史を「客観的」体系として語っていないこと、「人類学」に偏っていることを指摘して、建築史とは認めがたいうえに「論争的」で「学術的」ではないと批判したそうである。しかし、史実を記述する行為・記述する人間の認識自体が、時代と地域とに枠付けられているのは明らかである。だとしたら、