ブックマーク / note.com/takeuchi_kazuto (6)

  • 論文紹介 戦争の複雑性とマーケット・ガーデン作戦の敗因|武内和人|戦争から人と社会を考える

    軍事学の研究では戦争の結果は完全な予測が不可能であり、複雑性に富んだ現象であると考えます。これは戦争の結果は運次第であるという意味ではありません。個別に見ていれば、些末に思われるような出来事、例えば部隊の移動で生じたわずかな遅延や、上級部隊の情報提供で生じた下級の指揮官の事実誤認といった出来事が、ずっと後になってから極めて深刻な事態の原因となることがあるという意味で予測が困難なのです。初期の条件のわずかな変化であっても、結果に大きな変化が生じる性質のことを複雑性と呼びます。 戦争が複雑性に富んだ現象であることは、軍隊の運用に計画性を持たせる上で避けては通れない問題です。たとえ緻密に作戦計画を立案したとしても、その通りに作戦を実行できないためです。それでも、部隊が組織的な戦闘を遂行するには計画を立案しなければなりません。そこで軍事学では作戦計画の実現可能性を引き上げる手段として、作戦を可能な

    論文紹介 戦争の複雑性とマーケット・ガーデン作戦の敗因|武内和人|戦争から人と社会を考える
    kurokawada
    kurokawada 2024/06/08
    「軍事学では作戦計画の実現可能性を引き上げる手段として、作戦を可能な限り簡明にすることを重視すべきであるという考え方に立ちます」
  • 勢力移行論を使って世界情勢の安定性を評価する:World Politics(1958)|武内和人|戦争から人と社会を考える

    国際政治学の研究領域では、各国の勢力関係の優劣が大きく変化することを勢力移行(power transition)と呼んでおり、これが大きな戦争を引き起こす原因になると認識されています。イタリア出身の政治学者オルガンスキー(A. F. K. Organski)は、このメカニズムをいち早く特定した先駆者であり、1958年に発表した著作『世界政治(World Politics)』は勢力移行論の古典的な業績として今でも高く評価されています。アメリカの大学では、長らく国際政治学の教科書として使われていた一冊であり、1968年に改定された第2版が出版されていますが、日では翻訳されたことがないので、あまり知られていないかもしれません。 新興国の経済発展が国際政治にもたらすリスクを考える上でも、また中国の動向を理解する上でも興味深い著作なので、その一部の内容を紹介してみたいと思います。 Organski

    勢力移行論を使って世界情勢の安定性を評価する:World Politics(1958)|武内和人|戦争から人と社会を考える
    kurokawada
    kurokawada 2022/07/28
    「1960年代にオルガンスキーが中国の平和的な台頭が困難であることを、これほど的確に予見していたことは、もっと評価されるべきではないかと思います」
  • 【翻訳資料】一から学ぶランチェスターの法則「集中の原則」(1916)|武内和人|戦争から人と社会を考える

    イギリスの技術者フレデリック・ランチェスターは軍事学の理論研究に数理モデルの方法を持ち込んだことで知られています。1916年に出版した著作『戦争における航空機(Aircraft in Warfare)』は、将来の戦争における航空機の意義を説いたものですが、その中で戦闘過程を定式化する損耗方程式を提案しました。 現在ではランチェスターの法則、あるいはランチェスター方程式などと呼ばれていますが、これは一次則と二次則という構造が異なる二つのモデルの総称です。ランチェスターの一次則は敵と味方の部隊が同数の損害を与え合う過程を記述しています。しかし、ランチェスターの二次則では、敵と味方の戦力の大きさの違いに応じ、相手に与える損耗の大きさにも違いが生じることを示しています。それぞれが想定している交戦の形態は大きく異なっています。 現代の軍事学の研究者は、このモデルをさまざまな方法で拡張し、戦闘の解析に

    【翻訳資料】一から学ぶランチェスターの法則「集中の原則」(1916)|武内和人|戦争から人と社会を考える
    kurokawada
    kurokawada 2022/05/31
    「ランチェスターは戦闘を巨視的な現象として把握しており、部隊の戦闘を兵士の交戦から構成された集合と見ている。そのため、偶発的な事象の影響は平均されることになり」
  • ウクライナとロシアの戦争を想定した戦役分析をやってみた|武内和人|戦争から人と社会を考える

    ある授業でロシアウクライナの関係を取り上げたついでに、戦役分析として行った結果を研究メモとして公開しておきます。ただ物騒な内容なので期間限定とします。あらかじめ申し上げておくと、資料的、分析的な価値がある分析ではありません。『ミリタリー・バランス』のいくつかのデータを使って予備的な分析を行ったにすぎません。 ただ、基的なデータは一通りまとめているので、これから国際ニュースを追いかける方の参考になるかもしれません。より詳細な分析が必要となることがなければよいのですが、いずれアップデートした分析が必要になるかもしれません。 基礎的能力の比較ウクライナの2020年の国内総生産は1420億ドルで、総人口は43,922,939人、労働生産性を考慮した一人当たりの国内総生産に換算すると3,425ドルです。同時期のロシアの国内総生産は1兆4600億ドル、総人口は141,722,205人で一人当たりに

    ウクライナとロシアの戦争を想定した戦役分析をやってみた|武内和人|戦争から人と社会を考える
    kurokawada
    kurokawada 2021/12/22
    やはりロシアが圧倒的優位
  • 論文紹介 戦争の現実味が増すほど、人は合理的な判断ができなくなる|武内和人|戦争から人と社会を考える

    国際政治学の理論的研究では、合理的な行為主体がそれぞれの利益を最大化できる最適な戦略を選択するはずだと想定することが一般的になっていますが、戦争歴史は、このような理論が通用する状況ばかりではなく、むしろ通用しない場合の方が多いことを示しています。 以下の論文の著者らもこの問題に取り組んでおり、戦争が差し迫った状況に置かれると、人々は合理的選択理論で予測できない判断を下すようになると指摘し、その理由を人間の心理的メカニズムで説明できると主張しています。 Johnson, D. D. P., & Tierney, D. (2011). The Rubicon Theory of War: How the Path to Conflict Reaches the Point of No Return. International Security, 36(1), 7–40. doi:10.11

    論文紹介 戦争の現実味が増すほど、人は合理的な判断ができなくなる|武内和人|戦争から人と社会を考える
    kurokawada
    kurokawada 2021/12/12
    1930年代後半のフランスでは「ソ連を攻撃しろ」「なぜソ連と戦争しないのか」などという、はたからみると意味不明な論点が議会で大論争になっていたので、当時のフランス政界の支離滅裂さは考慮する必要がある
  • 国家が戦争に関与する事実を隠すことには戦略的な理由がある 『秘密戦争(Secret Wars)』の文献紹介|武内和人|戦争から人と社会を考える

    私たちがメディアを通じて知り得る世界の動きは全体の一部にすぎませんが、このことは最近の戦争に特によく当てはまります。現代の国際社会では、武力の行使や戦争への関与を隠そうとする国が少なくないためです。匿名の軍事行動で遂行される秘密戦争は20世紀以降に戦争の一形態として普及しました。 最近まで秘密戦争の実態は明らかではなかったのですが、非正規戦争、特殊工作などに関する調査研究が進展したことで、国家が秘密戦争を遂行する理由に対する研究者の理解は深まっています。現在では、国家が軍事行動を匿名化する狙いは、単に不利な事実を隠蔽することだけではないことが知られています。 研究者のカーソン(Austin Carson)が2018年に出版した著作『秘密戦争(Secret Wars: Covert Conflict in International Politics)』もこうした成果をもたらした業績の一つで

    国家が戦争に関与する事実を隠すことには戦略的な理由がある 『秘密戦争(Secret Wars)』の文献紹介|武内和人|戦争から人と社会を考える
    kurokawada
    kurokawada 2021/08/19
    「現在では、国家が軍事行動を匿名化する狙いは、単に不利な事実を隠蔽することだけではないことが知られています」
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