軍事学の研究では戦争の結果は完全な予測が不可能であり、複雑性に富んだ現象であると考えます。これは戦争の結果は運次第であるという意味ではありません。個別に見ていれば、些末に思われるような出来事、例えば部隊の移動で生じたわずかな遅延や、上級部隊の情報提供で生じた下級の指揮官の事実誤認といった出来事が、ずっと後になってから極めて深刻な事態の原因となることがあるという意味で予測が困難なのです。初期の条件のわずかな変化であっても、結果に大きな変化が生じる性質のことを複雑性と呼びます。 戦争が複雑性に富んだ現象であることは、軍隊の運用に計画性を持たせる上で避けては通れない問題です。たとえ緻密に作戦計画を立案したとしても、その通りに作戦を実行できないためです。それでも、部隊が組織的な戦闘を遂行するには計画を立案しなければなりません。そこで軍事学では作戦計画の実現可能性を引き上げる手段として、作戦を可能な