学術出版の現在――様々なネット活用事例 学術出版の側も手をこまねいているわけではない。一部ではインターネットの活用事例が目立ちつつある。たとえば、ブログの機能を生かして情報ハブ化したサイトを構築している笠間書院(注13)はその代表的な事例だろう。 また、前出の加藤哲郎や二村一夫のインターネットでの仕事を学術書として刊行した岩波書店のように(注14)、インターネット上の学術的営為を元に学術書を刊行する事例も散見される。学術雑誌では、ネット版論文誌『リテラシーズ(注15)』を創刊したくろしお出版や、『英語青年(注16)』という歴史ある媒体を紙版からネット版へと転換した研究社のような出版社もある。 さらに見過ごせないのは、既存の出版社とは異なる学術出版活動の担い手の登場だ。その担い手とは、すでにみた研究者個人に加えて、大学図書館である。京都大学学術出版会の協力を得て京都大学附属図書館が実施してい