喉がゆっくりと締まるような気怠さに身体が支配されていた。今日に限ったことではない。いつだってそうだった。いくら眠ろうと、いくら食べようと、いくら休もうと、いつまでも居座る呪いのような倦怠感。果てのない繰り返しへの飽きが原因だと気がついたのはいつだったか。だが、それを思い出すのすらもはや億劫だった。 「なあ、それ、いらないならくれよ」 仕事帰り、コンビニを出てすぐのことだった。不意にそんな声が聞こえてきたのは。最初に見えたのは指先だった。その先はどうやら手にしている食い物に辿り着くようだった。 「ああ?」 うめきとともに、眉間に力が入った。誰に言われたところでこんな感じだっただろう。仕事終わりの今ほど独りでいたい時間はなかった。十年前に離婚してからは特にそうだった。睨みつけるように見下ろすと、そこには男が一人しゃがみ込んだまま、こちらを見上げている。笑っているようだ。コンビニから漏れた灯りが
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