ブックマーク / econ101.jp (55)

  • ピーター・ターチン「エリート達の内輪での競争:複雑な社会の動態を理解するための重要な概念」(2016年12月30日)

    Intra-Elite Competition: A Key Concept for Understanding the Dynamics of Complex Societies December 30, 2016 by Peter Turchin 国家レベルの複雑な社会は、社会と政治の不安定性の大波という苦境に周期的に陥るが、これを説明する最重要要因の一つがエリート達の内輪での競争である。この考えは、約30年前にジャック・ゴールドストーンによって提唱された。ゴールドストーンは、イングランド内戦 [1]訳注:イギリスで1641~1653年にオリバー・クロムウェル率いる議会派と王党派との間起こった内戦。『清教徒革命』とも呼ばれる。 、フランス革命、17世紀のトルコと中国での内乱の構造的な前兆を分析することで、この考えを実証的に検証した。他の研究者達(セルゲイ・ネフェドフ、アンドレイ・コトラ

    ピーター・ターチン「エリート達の内輪での競争:複雑な社会の動態を理解するための重要な概念」(2016年12月30日)
  • カール・アイギンガー 「ポピュリズム: 根本原因、帰結、そして対策」(2019年4月20日)

    Karl Aiginger, “Populism: Roots, consequences, and counter strategy“, (VOX,  20 April 2019) ポピュリズムが体現するもの、それは自由民主主義、多元主義、人権、そして意見交換に対する挑戦である。稿では、ポピュリズムの特徴と原動力を精査したうえ、EUとその加盟国が取りうる戦略的対応に考察を加えてゆく。そこには、ヨーロッパが福祉・低失業率・低格差を兼ね備えた高所得社会のロールモデルにして、脱炭素化と公共部門運営のリーダーたる存在となるヴィジョンもふくまれる。 ポピュリズムの定義は容易でない。だが、それが自由民主主義、多元主義、人権、そして意見交換に異議申し立てをするとき、その影響は誰の目にも明らかになる。近日開催される欧州議会選挙では、様々なポピュリスト政党がヨーロッパの在り方に対する影響力を獲得するかも

    カール・アイギンガー 「ポピュリズム: 根本原因、帰結、そして対策」(2019年4月20日)
  • タイラー・コーエン「なんでみんなセックスしないの?」(2005年5月9日)

    Tyler Cowen “Why don’t people have more sex?” Marginal Revolution, May 9, 2005 以下は当ブログの熱心な読者であるマイケル・ヴァッサーのコメント どのような形態の帰結主義も,性的な行動の解釈に多大な困難を伴います。端的にいえば,説明できないセックスの不足があるのです。女性も男性もその他のほとんどの活動よりもセックスを楽しく思う(これは平均としての話で,私がそう感じるかは別の話です)ことを示す研究や,セックスが質的に低コストであることを踏まえれば,おおざっぱな推定に推定したとしても,効用を最大化する人はほとんどの人よりもおそらく多くの時間をセックスすることに費やすように思えます。この点に関する経済学的な議論を何かご存知でしょうか。 僕らに必要なのは正当事由というよりも,取引を拒むことから利益が生じる理由だ。いくつか

    タイラー・コーエン「なんでみんなセックスしないの?」(2005年5月9日)
  • ジョセフ・ヒース「なんでも人種化に抗して」(2018年4月25日) — 経済学101

    [Joseph Heath, “Against the racialization of everything,” In Due Course, April 25, 2018] 私も含めていろんな学者が飽きもせず繰り返し語ってきたように,人種は社会的な構築物だ.だが,こう語る多くの人たちは,社会的構築物ですよとそっけなく語ってすませて,そのあとは人種が永遠不変の自然種であるかのように扱いつづける.私に言わせれば,人種が「構築物であること」を強調する要点は,人種がそれ抜きですませられない社会的カテゴリではないことを強調するところにある.人種というのは,個々人の素性や対人的なやりとりの特定の側面を切り取る独自の方法だ.だが,ものごとの切り取り方なら他にもあるし,必ず人種という切り取り方をしなくてはいけないわけでもない.こう考えると,どんな場面であっても,いったい今ものごとを切り取るのに人種が最

    ジョセフ・ヒース「なんでも人種化に抗して」(2018年4月25日) — 経済学101
  • ジョセフ・ヒース「『批判的』研究の問題」(2018年1月26日)

    [Joseph Heath, “The problem with “critical” studies,” In Due Course, January 26, 2018] 学部生だった頃,こんな風に思っていた――《「客観的」「価値自由」なやり方で社会現象を研究する実証主義が社会科学で蔓延しているのは世界の災厄だ.そんなものは幻想だ,というか有害な幻想だ.だって,客観性をよそおいつつ,その裏には隠れた目標があるんだから.つまり,支配しようという利害関心をもってるんだ.人々を主体ではなく研究の対象として扱うなんて政治的に中立じゃない,だってそうやってうみだされる知識ってのは,どういうわけかうまいぐあいに,まさに人々を操作し管理するために必要とされるたぐいの知識になってるもの.つまり,「客観的な」社会科学はちっとも価値自由なんかじゃない,むしろ抑圧の道具になってるじゃないか.》 これに替わる選

    ジョセフ・ヒース「『批判的』研究の問題」(2018年1月26日)
  • アレックス・タバロック「生徒主導型の授業は教員の技能を無駄にしている」

    [Alex Tabarrok, “Student-Led Classrooms Waste Teacher Skill,” Marginal Revolution, May 2, 2018] 大量の研究によって,他の教示法に比べて直接教示法 (direct instruction) の方が,すぐれた結果をもたらすことがわかっている.『労働経済学ジャーナル』に載ったエリック・テイラーの新研究では,いかにして,そしてなぜそうなっているのかについてさらに情報を提供している.テイラーは無作為対照実験をもちいて,弱いかたちの直接教示法の授業と生徒主導の授業とを比べている.生徒主導の授業では―― 数学の概念についてみずから生徒たちがみずから考えてお互いに伝え合うよう期待される.このとき,教員は「会話を円滑にし」「生徒たちがみずからの考えを表現する手助け」をしつつ,「生徒たちが問題に正しく答えることでは

    アレックス・タバロック「生徒主導型の授業は教員の技能を無駄にしている」
  • 創造性と自由

    (訳者:はてブでのnagaichiさんからの指摘を受けて、Florenceを「フローレンス」から「フィレンツェ」に変更しました。ありがとうございます。) 2018年1月6日、 VoxEU原文 Michel Serafinelli、トロント大学経済学准教授 Guido Tabellini、ボッコーニ大学経済学教授 概要:イノベーションはしばしば特定の地域、いわゆる「創造性クラスター」に集中している。このコラムでは有名人の出生についての新しいデータを使って、11世紀と19世紀の間のヨーロッパの都市における創造性のダイナミクスについて探求する。その結果は、創造性が経済的繁栄に先立つ事、そして個人的および経済的自由を守る都市の制度が多くの領域でのラディカルなイノベーションにつながっていく事を示している。 創造性は様々な分野において時間的、空間的にしばしば非常に高く集中している。15世紀、フィレンツ

    創造性と自由
  • アレックス・タバロック「理系科目の男女差はみんなが思ってるようなのじゃないよ」 — 経済学101

    [Alex Tabarrok, “The Gender Gap in STEM is NOT What You Think,” Marginal Revolution, September 12, 2017] NBER の新しい論文 (pdf) で David Card と Abigail Payne が STEM〔科学・技術・工学・数学〕の男女差についておどろきの新しい説明を提示している.通説だと,そうした男女差は女性に関わることであり,いろんな力がはたらいて――〔全般的な〕差別,性差別,適性,選択…お好みの要因をどうぞ――女性が STEM 分野で勉強しにくくなっているのだと考える.Card と Payne が言うには,男女差のかなりの部分は男性たちと彼らの問題に関わるものだ.少なくとも,彼らが出している研究結果をぼくはそう解釈してるけど,どうも著者たちはじぶんたちが出した研究結果がどう

    アレックス・タバロック「理系科目の男女差はみんなが思ってるようなのじゃないよ」 — 経済学101
  • ポール・クルーグマン「中流階級を再定義する」

    Paul Krugman, “Redefining The Middle Class,” Krugman & Co., February 7, 2014. [“The Realities of Class Begin To Sink In,” January 27, 2014] 中流階級を再定義する by ポール・クルーグマン Victor J. Blue/The New York Times Syndicate アメリカにはおかしなことがあれこれある.その1つは,長らく見られる傾向として,自分のことを中流階級だと考えてる人たちがとてつもなく広範囲にまたがっている点だ――そして,彼らは自分を欺いている.国際的な基準にてらせば貧困者ってことになるはずの低賃金労働者たちは,中央値の半分を下回る所得でありながらも,自分たちは中の下にあたる階層だと考えている.その一方で,中央値の4倍や5倍の所得を

    ポール・クルーグマン「中流階級を再定義する」
  • タイラー・コーエン「もっとも人に敬意を払う国はどこ?」

    Tyler Cowen “Where are people respected the most?” (Marginal Revolution, December 31, 2013) ※訳者補足:文中にリンクを示した通り、記事は先日紹介したノア・スミスの記事に対するコーエンの反応。これ以外ではマンキュー(himaginary氏による紹介)、デヴィッド・ヘンダーソンなども記事を書いているので、興味がある方は参照のこと。 先日のノア・スミスの記事が出た後、僕らはこの問題について昼を取りながら話し合った。ノアは高度かつ比較的平等な敬意が払われる国として日を挙げていて[邦訳]、これは職人、工場労働者、外国政府高官、そして狐についてはその通りだろう。でもこれは、良い職業からしばしば締め出されている女性の立場を考慮に入れた、より一般的な場合においても正しいだろうか。若年層の「ロスト・ジェネレーシ

    タイラー・コーエン「もっとも人に敬意を払う国はどこ?」
  • タイラー・コーエン 「20世紀のアメリカで最も急速な勢いで技術進歩が起きた10年は・・・」(2009年3月12日)

    ●Tyler Cowen, “The most technologically progressive decade of the 20th century”(Marginal Revolution, March 12, 2009) いつだかわかるだろうか? 経済史家であるアレクサンダー・フィールド(Alexander Field)によると、それは(物議を醸すことだろうが)1930年代ということだ。以下に、論文の冒頭を引用するとしよう。 世間の人々や学者の想像の世界に占める大恐慌(Great Depression)の位置付けを考えると、大恐慌の過程で失われた生産、所得、支出について何度も何度も繰り返し強調して語られる(それも、もっともなことではある)ことを考えると、次のような仮説は驚きをもって迎えられることだろう。アメリカのこれまでの歴史の上で、マクロ経済レベルで最も急速な技術進歩が見られ

    タイラー・コーエン 「20世紀のアメリカで最も急速な勢いで技術進歩が起きた10年は・・・」(2009年3月12日)
  • クルーグマン「アメリカの新たな雇用の現実」

    Paul Krugman, “America’s New Employment Reality”, October 11 2013. アメリカの新たな雇用の現実(2013年10月11日) by ポール・クルーグマン Jenn Ackerman /The New York Times Syndicate 何年にもわたって,ぼくみたいな連中は,雇用をめぐってこんな主張をする人たちと,繰り返し論争してきた.その人たちに言わせると,「失業率が高くなってる理由は,アメリカの労働者たちが21世紀経済に必要な技能をもちあわせていないから」なんだそうだ.この主張には,明言されないもののたいていこんな含意がともなう――そこで話題にしてるのはテクノロジーにかかわる技能,科学と数学の知識,そして一般に最先端の技能だ,という含意だ. ぼくの側からの反応はいつでもこれだ:「お金はどうなってんのよ」 特定の技能の供給

    クルーグマン「アメリカの新たな雇用の現実」
  • クルーグマン「(すんごい)お金持ちはいっそう(すっごく)お金持ちになってる」/「有害な格差」

    Paul Krugman, “The (Very) Rich Are Getting (Much) Richer”, September 20, 2013. (すんごい)お金持ちはいっそう(すっごく)お金持ちになってる(2013年9月20日) by ポール・クルーグマン Ozier Muhammad/The New York Times Syndicate 格差談義大好きさんたちは,Piketty-Saez のデータ更新を心待ちにしている.経済学者 Thomas Piketty と Emmanuel Saez によるデータは,所得税申告をもとに合衆国における所得が頂点に集中している度合いを推計している. 最新版は,期待を裏切らない内容だ:データからは,予想通りとはいえ確証がなかったことが見て取れる.大多数のアメリカ人がいまだに苦しんでいるなか,すんごいお金持ちは大不況から回復してお元気そう

    クルーグマン「(すんごい)お金持ちはいっそう(すっごく)お金持ちになってる」/「有害な格差」
  • クルーグマン「アメリカのイカレ具合と階級闘争」/「政府機能停止:混沌の経済と政治」

    Paul Krugman, “American Craziness and Class Warfare,” October 3, 2013. アメリカのイカレ具合と階級闘争(2013年10月3日) by ポール・クルーグマン Sakurai/Westdeutsche Allgemeine Zeitung / The New York Times Syndicate 経済学者の Mark Thoma がこの前,『フィスカル・タイムズ』に見事なコラムを書いてる.そのなかで,債務上限をめぐる抗争を,もっと大きな問題につなげてる.その問題とは,極端な格差だ.ここでは,現実は Thoma 氏が示唆しているよりも酷いんじゃないかと示唆したい. 彼はこういう言い方をしてる:「格差が広がり,各人のさらされる経済的リスクに貧富のちがいが生じることで,ある集団は自分たちのことを社会の「創出者」だと考え,それ以

    クルーグマン「アメリカのイカレ具合と階級闘争」/「政府機能停止:混沌の経済と政治」
  • クルーグマン「アメリカでの保険医療をめぐる政治の機能停止状況」

    Paul Krugman, “In the U.S., a Political Showdown Over Health Care”, September 26, 2013. アメリカでの保険医療をめぐる政治の機能停止状況 by ポール・クルーグマン Gabriella Demczuk/The New York Times Syndicate © The New York Times News Service 10年ほど前,エッセイ集『嘘つき大統領のデタラメ経済』の「イントロダクション」で,こんなことを書いた――他の誰でもなくヘンリー・キッシンジャーの定義により,現代の共和党は「革命勢力」だ.キッシンジャーの定義では,通常の政治の規範をいっさい受け入れず,ただ急進的な立場をとろうとするばかりでなく,人々が理解している統治システム全体を毀損するかたちで行動する勢力のことを革命勢力という. 当

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