竹内研究室の日記 2019 | 01 |
中村修二さんがノーベル賞を受賞されたことから、お祝いとともに、日本の科学技術の今後について心配する声など、メディアの方の取材の依頼を受けるようになりました。 本当はフラッシュメモリがフラッシュメモリにノーベル賞が授与され、開発チームの一員、当事者としてメディアの取材を受けたかったのですが仕方ない。日本の技術者の処遇を考えるきっかけになれば良いと思います。 問い合わせて頂く内容は例えば、 「日本の技術者は虐げられているのではないか」 「ノーベル賞は日本の経済が良かった時代のもので、これからの日本の科学技術は競争力があるのか」 「日本の技術者・研究者は報われないのではないか」 「日本の大学の研究環境は悪化するばかりではないか」 「特許法の改正で特許の帰属が発明者から企業に変わることで、更に技術者のモチベーションが下がるのではないか」 個々の取材にお答えするのも面倒なので、このブログでお答えしよ
東芝をやめて大学に移ってから7年が経ちました。大学に移った当初は全く研究資金が無くて金策に走る毎日。そうしているうちに助けて下さる方いて、何とか研究室を立ち上げることができました。 当時はまだ日本の半導体はそれなり頑張っていたので、半導体産業への期待という意味で国家プロジェクトが立ち上がり、その恩恵も受けました。 おかげさまで研究室が立ち上がり、研究スタッフも集まり、多くの方のご支援のおかげで、自分では思ってみないほどの成果をあげられました。 まさか毎年ISSCCで発表できるなんて、思ってもみませんでした。 研究はとても好調ですが、実は今、予想外の逆風にさらされています。 自分の研究は順調だし、古巣の東芝のフラッシュメモリ事業も絶好調、ビッグデータを蓄えるストレージ産業も絶好調。自分の周辺だけは何の問題もありません。むしろ、状況は良くなる一方。 ところが、気付くと、周囲の他の日本の半導体や
iPhone5Sが発売になりました。au、ドコモ、ソフトバンクの料金設定について、いろんな駆け引きがあるようですね。 それはさておき、フラッシュメモリの観点からiPhone5Sの価格を見てみましょう。 どの会社でも、新規購入・機種変更を問わず、iPhone5Sの16GBモデルに比べて、 ・32GByteモデルは1万320円高い ・64GByteモデルは2万640円高い 中身の違いは単純にフラッシュメモリだけですから、 ・16GByteのフラッシュメモリを1万320円 ・32GByteのフラッシュメモリを2万640円 で売っているわけです。 一方、中身は同じフラッシュメモリの16GByteのSDカードは価格.comの最安値は、925円。 つまり、高々、千円のフラッシュメモリを一万円くらいでアップルは売っているわけですね。 なんと、価格が10倍です。 しかも、フラッシュメモリを製造しているのは
元社員からの巨額な特許訴訟をなくすため、特許の権利を会社に帰属させる法改正が行われるそうです。 アメリカでは、特許提案・出願時に、企業が発明者の従業員に対価を支払うので、そういう制度になるんでしょうかね。 でも、法改正で、日本企業は強くなるんですかね? 私は否定的です。 そもそも、なぜ、元社員が古巣の企業を訴えるような、不幸な関係になったのか。 それは、自らの不遇の不満、会社へのやるせなではないでしょうか。 一人で発明しても、事業化の時には、立ち回りがうまい人が、成果を持って行ってしまう、というのは、良くあること。 自分も、そういう体験に嫌気がさして、辞めた一人。 先日のブログにも書いたように、優秀なエンジニアから辞めていく現実は、なぜ、見向きもされないのか。 「パイオニアをリスペクトするシリコンバレーと、リスペクトしない日本。頑張った人は残るシリコンバレー、頑張った人から辞めていく日本。
電機メーカーが苦しくなる中、企業も大学も知恵を出せ、と迫られているのですが。 ・日本企業はハードは強いけれど、ソフトは弱い。 ・ハードを売るための標準化など、売るための仕組みを作ることが弱い。 ・ハードを売るための環境やコラボレーションが下手。 など、言われますね。 何か仕様が決まったものを作るのは上手だけども、何を作ったらいいかを考えるのは苦手。 また、デザインなど、新しいライフスタイルを提案するのもの下手。 なぜそうなってしまったのか。 ある技術者の言葉で、「自分は技術好きでやってきたので、そういうことを考えろと言われても苦手なんだよな」 この言葉は、今の日本のメーカーの苦しさを象徴しているような気がします。 いまや、コンピューターにしろ、テレビにしろ、エレクトロニクスの製品のスペックは十分に高い。 これ以上、スペックを上げても、対価を払ってもらえない。 だから、単にスペックを上げる技
シャープがひどいことになっていますね。 液晶、太陽光パネルに投資をしたところ、市況の大幅悪化で、裏目に。 液晶も太陽光パネルも世界中のどの企業も苦しく、経営危機や、倒産が相次いでいます。 市場の先行きを見誤った、といえばそれまでなのですが、エレクトロニクスはハイリスク、ハイリターンの世界。 積極投資で勝負に出たのはいわば賭けですから、負けた場合には、経営危機は避けられない。 でも、投資の賭けをしないと、勝つこともできないのもこの世界。 日本に限らず、こういった、企業の栄枯盛衰はこれからも、世界中で起こるでしょう。 例えば、DRAMは元々はインテルが開発した製品。 80年代から90年代にかけて日本企業が世界の市場シェアをほぼ独占し、日米半導体摩擦になりました。 ところが、90年代半ばからは韓国企業に日本企業は負け。 今年の2月のエルピーダメモリの倒産により、日本にはDRAMの企業は無くなりま
6月にハワイで開催される、半導体ではISSCCに次ぐトップ学会、Symposium on VLSI Circuitsに論文が採択されました。 ReRAMといった新メモリとフラッシュメモリを組み合わせたハイブリッドSSDのコントローラー技術です。 SSDのコントローラー技術、メモリを制御するシステムを開発し、速度を11倍向上、書き換え回数を6.9倍向上、電力を93%削減。 卒論で優秀論文賞を受賞した藤井君が発表します。 学部生だって、できるやつは、できるのです。 Session 16 – Flash Memory Friday, June 15, 8:05 a.m. 16.3 - 8:55 a.m. "x11 Performance Increase, x6.9 Endurance Enhancement, 93% Energy Reduction of 3D TSV-Integrated
エルピーダメモリは私の研究の重要なパートナーだったので、倒産は私の研究への影響は大きい。このところ、様々な投資家さんとお話しすると、自分の考えの甘さを実感する。 どうしても、自分のやっていることは重要だと思いたいし、いろいろな思い入れがある。 第三者から、「今はあなたのアイデアは良いけど、大企業がすぐにコピーして、追いつくのではないか?」 「将来も優位に立ち続けることができるのか?」 「絶対にあなたしかできないことは何か?」 「チームの中で、本当にこの人は必要なのか?」 と突っ込まれると、考え込んでしまう。 投資家という第三者の厳しい目でそぎ落として行った時に、何が残るのかを、時々考えた方が良いですね。 これは、研究計画、ベンチャーのビジネスプラン、個人のキャリアプランすべてに言えること。 組織に守られていると、自分がどれだけの価値があるか、見失いがち。 事業をやめることになった時や、会社
エルピーダメモリが破綻してしまったので、プロジェクトの先行きは・・・ですが、ReRAMがキーマンズネットに紹介されました。 開発は順調に進み、実用化に向けて開発を加速していた矢先に、エルピーダメモリが破綻。プロジェクトが打ち切りになってしまうとすると、本当に残念です。これを見てReRAMへの投資に興味を持ってくださる方が居れば。。。 (以下、転載) フラッシュメモリのように電源供給がなくてもメモリが保持でき、DRAMのように読み書きが高速、しかも小型化が可能で大容量。それが次世代不揮発性メモリのReRAMだ。「不揮発性」とは、常にメモリに通電していなくても記憶が消えないことを指している。 ReRAM実用化のための開発競争は国内外で繰り広げられているが、昨年末にエルピーダメモリが他社に先がけて50nm製造プロセスによる64Mビットメモリセルアレイの開発と検証に成功し、いよいよ実用化に向けて勢
ISSCCの出張のために、サンフランシスコに来ていますが、締切が明日、今週中などの書類の要求が容赦なく、次々と来ている。 せっかく学会に来ているのに、学会に出る暇がほとんど無く、ホテルの部屋で書類作成に明け暮れています。 日本と連絡ながら仕事をしていると、ほとんど徹夜になってしまうので、学会中は居眠りばかり。 まあ、年度末だから仕方ない。 今晩も確実に徹夜だ。 いくつの年になっても、仕事が多いと鍛えられる、と前向きに考えよう。 さて、学会の方ですが、インテルの圧倒的なデバイスの技術力を見せつけられています。 22nmのトライゲート型のトランジスタで、技術の詳細は日経Tech-Onに記事を書きましたので、こちらをご覧ください。 正直なところ、ハードウエアでここまで圧倒的な差をつけられると、少々、回路やシステムで頑張っても、全然ダメ。 以前から差はありましたが、もう、絶対に追いつかないだけの差
今の電機メーカーの凋落、日本のトップスクールの秀才を集めて、どうしてこうなったのでしょうか。 私は東大で教えていますし、東大出身ですので、「お前なんかに言われたくない」って言われそうですが、時代が求められていることが大きく変わったと思います。 いわゆる、学歴秀才というのは、試験のように、環境が整った中で答を素早く、正確に求めることは得意。 例えば、LSIでは、製品の仕様が決められたら、最適な回路の設計をするのは上手です。 これを、解決力と呼びましょう。 でも、そういった技術の最適化では、差別化ができなくなってきた、というのが今の電機メーカーの凋落の原因の一つではないでしょうか。 世界中で、優秀なエンジニアは増えましたし、良い技術を作っても、メールやネットで世界中にすぐに知れ渡るようになりました。 むしろ、いま必要なのは、誰も答を知らないもの、一見不可能と思われるものの中にチャンスを見出すこ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く