西山朋佳女流三冠(29歳)が挑んだ棋士編入試験は、2勝3敗で決着した。「初の女性棋士ならず」の言葉でまとめられがちだが……西山を筆頭に、試験官として全力を尽くした26歳の柵木(ませぎ)幹太四段ら棋士の熱量は凄まじいものだった。現場を訪れた「教授」こと勝又清和七段が舞台裏を記す。〈NumberWebノンフィクション/全2回の1回目。棋士の肩書は基本、初出以外は省略〉 多くの棋士は西山をすでに「棋士」と見ている 「相手にとって重要な一局ほど全力を尽くすべき」(米長邦雄永世棋聖) 「米長先生の言葉は将棋界の要であり礎でもあります」(羽生善治九段) 「試験官の棋士には本当に人生を懸けて戦ってほしいです。負けたら全てを失うぐらいの覚悟で挑まないのであれば、棋士になった意味がなかったのではないかと思います。西山さんにとっては人生が懸かった対局ですので、真剣に一生懸命ぶつかってきます。棋士側はそれを全身